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働きがい改革指揮のライオン女性役員、自身も副業経験

働く女性のキャリアスパイス(6)

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NIKKEI STYLE

結婚や出産で女性が職場から去っていったのは昔の話。ライフイベントも経ながら働き続けていくのが、令和の女性たちに多いワークスタイルだ。とはいえ、ロールモデルが身近にいなくて先行きが見通せなかったり、働き始めた頃とは違って「成長」を実感できなかったりで悩むことも。先輩女性たちはどんな体験をバネにキャリアを築いていったのだろうか。活躍する女性に、自身を今に導いた「あの頃」や迷いを脱する助けとなった「こんな言葉」を語ってもらう。

歯磨き用品で国内トップシェアを誇るライオン。同社は売上高に占める海外比率を、2020年12月期の約4分の1から30年までに50%に高める目標を掲げる。国内からアジアへ、モノからサービスへ。「日本生まれアジア育ちの世界企業」との将来像を掲げる掬川(きくかわ)正純社長は、現職に就任した19年に「働きがい改革」を宣言した。生産性向上やイノベーションの源泉ともなる、高いエンゲージメント(帰属意識や働きがい)を社員の間に築き、プライベートも含む個々のウェルビーイング(心身の健康)を充足できる企業でありたい、との思いを込めた宣言だ。

今回は、同社の執行役員として、そんな働きがい改革の総指揮を執る、人材開発センター部長の小池陽子さんにご登場いただく。

ご本人のキャリアの話の前に、同社の「働きがい改革」を少し見ておこう。たとえば、eラーニング講座。営業・マーケティングや物流関連をはじめ実践的な4000超の学習コンテンツがあり、「大地震で物流網が寸断」など社内で実際に起きた事例のケーススタディーも。所属に関係なく、誰もが受講可能で「自律のキャリア」を側面支援する。自由闊達な空気感の良い職場づくりに向けて、全管理職には6カ月かけて部下との関係を再定義する「関係性向上プログラム」の受講が義務付けられた。

さらに、新たな視点や知見を磨くチャンスにしてほしいと副業も促す。地方の中堅・中小企業を支援する内閣府の「プロフェッショナル人材事業」に21年に参加。いまでは地方自治体から直接、副業人材の照会が舞い込む。小池さんが部門長を務める人材開発センターでは22年4月、「副業希望登録」制度も導入した。

◇     ◇     ◇

「成長したい」 自らも鳥取県のハローワークの案件で副業

自身も副業を実践した1人だ。鳥取県のハローワークがマッチング役となった案件で、「1ターム3カ月」で計9カ月ほど、10年代半ばに創業した鳥取和牛販売店の経営を支援した。オンライン会議のシステムなどを使い、創業者が頭を整理するための「壁打ち」の相手を務めるなどコンサルタント的な役割を担った。

鳥取には2回、うかがうことができて従業員の皆様にもお会いしてきました。(副業先の経営者は)ご実家が酪農家だった方なんですね。生き物相手ですから、酪農のお仕事はハードで、ご両親もお休みになれない。そうしたご苦労を見て育った分、大事に育てて商品化した精肉が、「適切な流通網で価値に見合うように売られていく世界をつくりたい」と創業なさったそうです。

「創業者の思い」に触れられたことは大きな勉強になりました。もちろん、当社もパーパス(PURPOSE、存在意義)やビリーフス(BELIEFS、信念)といった「考え」は持っています。ただ、起業に至っただけの熱意の大きさやスピード感は草創期ならではのものです。思いを事業化して経営を軌道に乗せていき、お金をいただくことの難しさ。それを目の当たりにして、「自分たちも、もっとスピードを上げるべきだ」など、日々の業務を見直す新たな視点や自分なりの「宿題」がいくつも見つかりました。

副業した理由ですか? う~ん…………自己成長ですね。少し話が飛びますが、私、クラシックバレエを習っているんです。大人のための指導を専門的にしてくださるところで、仲間の大半は50~60代の方々です。なぜ、その話を出したかというと、そのレッスンでは、いまの私でも、できることがどんどん増えていくんですよ。まだまだ伸びしろがあると気づかされる。仕事も同じだと思います。常に成長していきたい。

キャリアは意思で描けるものではない、と思っていた

「常に成長を」と話す現在とは対照的に、そのキャリアは「受け身」のスタートだった。新卒で入社したのは、男女雇用機会均等法施行翌年の1987年のこと。育児休業も法制化前で、当時の社会では結婚を機に退職する「寿退社」も珍しくなかった。

私は理系です。大学は薬学部に進み、薬剤師の資格も取得しました。ただ、それは母に「女性は免許を持っていた方が何かと便利よ」と助言を受けたからで、医療の世界で何かしたいといった考えはなかった。

薬の知識が生かせること、製品が身近で親しみが持てたこと、当時から「キャリアチェンジがしやすい」と言われていたことなどでライオンに入社しました。

入社前後のライフイベントも踏まえたキャリア展望ですか? 30歳くらいまでに第1子を授かるといいな、とは思っていました。

ただ、その頃は「いつか結婚したら相手に転勤があるのかもしれない」とか、「妊娠・出産したらどうなるんだろう」とか分からないことだらけ。仕事については「自分のキャリアは自分の意思で描いていけるものではない」としか思えなかった。その分、「何か思い立ったら、すぐにやろう。次にいつチャンスがあるか分からない」と考えるようになりました。私、せっかちなんです(苦笑)。

働きがいを求めて「転職未遂」を2度経験

巡り合わせの妙というべきか。そんな「思い立ったら、すぐにやろう」という発想が当人を図らずも自身の「働きがい」向上のための行動へと駆り立てていく。

社内でも皆、知っていますが、実は2度の「転職未遂」を起こしています(苦笑)。1度目は入社3年目の頃。夫と出会う場ともなった、最初に配属された研究所時代です。界面活性剤の研究に携わっていました。

あのう、ガラスの表面が滑らかになると一定の反射率が保たれるので、とてもきれいに見えるんですね。ところが、ごく少量でも界面活性剤の拭き残りが生じると汚く見えてしまう。そこで拭き残りのないガラス用洗剤の研究をしていた頃です。実験のキホンというべきことですが日々、ガラスを「正常」に、つまり、きれいな状態にする作業が必要だったんです。それが、どうも性に合わなかった。

そもそも几帳面(きちょうめん)ではないし、研究者の道を究めたい訳でもない。「自分に関心があるのは共感を持って伝えることだなぁ」と思っていたときに、学生時代には知らなかった、広報という仕事に興味を持って……。当時はまだインターネットが普及する前で、新聞に求人広告の欄が設けられていました。そこでPR会社の求人を見つけて転職を決意しました。

いまより終身雇用が色濃く、転職は「仕事が続かない」など負のイメージも持たれがちだった時代。若い社員の行く末を心配したところもあるのだろう。小池さんの直属の上司から彼女の転職意向を聞いた当時の研究所長は、広報部長(当時)の出張先まで早速、足を運んだ。そして、異動希望の研究員がいると相談してくれたことを後になって知る。

同僚にも上司にも本当に恵まれました。私はこのライオンという会社が大好きです。最終的に当時の広報部長が面談してくださり、「PR会社のように社外からではなく、まずは社内から広報をやってみませんか」とおっしゃってくださって……。それから数カ月後に広報への異動が実現しました。製品や研究の広報を担当しました。

2度目の転職未遂は、40代で初めてマーケティング部門に異動して、しばらく後のことです。

16年間在籍した広報は本当に楽しくて、天職と思えた。異動は全く希望していませんでした。ところが、健康食品を巡る広報での仕事ぶりなどをみて「マーケはどうか」と引っ張ってくださった方がいらっしゃいまして。主任昇格の時期で、管理職に仲間入りするにあたり、スキルを広げる狙いもあったかもしれません。

けれど、未経験でマーケティング理論も分からなければ、事業計画を立てたり薬事承認を経て製品を世に出したりする手続きも知らない。そうしたあれこれも遠因となって、また転職を考えるように。ヘルス&ホームケア事業本部薬品事業部の商品開発担当時代のことです。

今度は、組織を活性化するコンサルタントに転職したいと考えました。大企業病というのでしょうか、どうも元気がない組織だったんですね。(組織コンサルへの転職を考えたのは)それも関係しているかもしれません。

ちょっと話を横道にそらします。私は米ギャラップ社が認定する「ストレングスコーチ」の資格を持っているんですね。このため、社内でも役職とは別に、個人としてワークショップなどを開いています。そこでも実感するのですが、人間、自分の原動力となるものに基づく話題のときって、語気が荒くなって自然に鼻の穴が大きくなるんですよ。そういうときのエネルギーはとてつもなく大きいし、生産性も高くなる。

「皆がそういう力を自然に発揮できる職場になるように取り組んでみたい」と考えた訳です。その当時から、魅力ある職場づくりへの課題意識はずっと持っていました。結果的に転職を踏みとどまったのは、1回目と同じく「外ではなく、ここでやってみよう」と考えを変えたことでした。

長年、広報に携わるなかで築き上げたのは、「共感から入るのが自分のプレースタイル」だということ。そんな自分の基盤を生かすうえでも、まずは自らが周囲に働きかけて空気感を少しでも変えられないか。それができれば、部門全体にもプラスの効果が波及していくのではないか。そう考えました。

「それは全部、俺の責任だから」 上司のあり方を学ぶ

相手への共感を大事にしながら密なコミュニケーションを重ねて開発に取り組んだ結果、発売1年足らずで100万個の販売となったヒット商品を生み出す。2013年3月発売の目薬「スマイル40プレミアム」だ。ただ、長い会社人生。光もあれば陰もある。

薬品事業部の後半に大きな失敗がやってきまして……。開発の過程で、私の初歩的なミスで大きな金銭的損失を出してしまったんです。上司に報告すると、即座にこんな言葉が戻ってきました。

「小池に責任は一切ない。それは全部、俺の責任だから」

その方は、私を長年在籍した広報からマーケに引っ張ってくれた方でした。幸せだったのは、直属のリーダーも全く同じことを言ってくれたことです。「俺が悪い」と。はい。私にとっての「忘れられない一言」です。「上司が責任を取るというのは、こういうことか」と彼らから学びました。

「部下には失敗をさせて育てろ」というけれど、なかなかできないことですよね。ましてや、そのときは「教育」ではなく、本当に金銭的な損失を出してしまった訳で……。私自身はいまでも、完全に自分のミスだったと思っています。抱えている仕事を終わらせることしか考えられなくて、目的を考えずに取り組んだことが敗因だったと思っています。

当時、私は抱えていたタスクが非常に多かったんですね。なので、上司は労務管理者として仕事の配分の仕方とか、その辺りについてもお考えになったのかもしれません。そこは分かりませんが、失敗に気づいてショックも大きいなか、間髪を入れずに「俺が悪い」とおっしゃってくださって、どれだけ心強かったことか……。

こういうリーダーにならなければいけないと思いました。何かあったときに、「それ、決めたのは私ですから」と言える自分になろうと。同時に、その1件は「自分はライオンで生きていこう」と覚悟を決めた出来事ともなりました。

プライベートでは、母という顔も。1994年に結婚し、95年に一女を授かった。仕事と育児の両立生活のコツを尋ねると、「キーマンは夫です」と笑った。

夫は研究者で、職場はかつて私も通った神奈川県小田原市にある研究所です。結婚した当時、会社には既に新幹線通勤の制度がありました。ただし、持ち家であることが条件だったので、結婚と同時に小田原に住まいを確保。コロナ禍を経て、在宅勤務の機会も増えましたが、出社の際はいまも新幹線通勤です。

だから、たとえば娘が保育園児で発熱で呼び出しなどがあった際も、物理的な距離の差もあり夫が対応してくれました。感謝はつきません。彼は当初から、「我が家は合宿所のようなもの。(家事なども)やれる人がやれることをやろう」という考えの人で、娘が生まれた際も育休取得を望んだほど。それは実現しませんでしたが「合宿所」という言葉通り、家庭に関するあれこれは2人で担ってきました。ちなみに、冒頭にお話した副業は、夫婦2人で携われることを第1条件に探しました。

マストだけでなくウィルで生きる部分があっていい

その後、ビューティケア事業部長も務め、いまは「希望を出していた」という人事関連の部門長として活躍する小池さん。今年9月、一人娘が挙式。その際、こんな手紙を読んでくれた。「母から学んだことは好きなことをして生きていいんだということです」。その言葉を聞いて、本当にうれしかったという。後進女性たちにも、自分の「したいこと」を貫いてみようと説く。

結婚式で娘が手紙を読んでくれたときに「あ、これが私なんだ」「そうか、好きなことをやってきたんだ」って気づかされました(苦笑)。生き方はもちろん、人それぞれ。ただ、後進の皆さんには「マスト(must=しなければならないこと、義務)だけでなくウィル(will=しようと思うこと、意志)で生きる部分があっていいんじゃない?」とお伝えしたいです。

性別を巡る過去からの社会状況もあって、女性の場合、やりたいことがあっても「やってはいけない」と閉ざしてしてしまうこともあるのではないでしょうか。そこから自由になってほしい。そう思います。

長所と短所はコインの裏表のようなもの。これまで、たくさんの方にコーチングをさせていただくなかで、ご本人が気づいていない「強み」があることに気づかされました。

それが何か分かると、すごく開き直ることができて、ご自身の目指すところに輝きながら突き進んでいかれるようです。自分がまだ気づいていない強みが、あなたにも、きっとある。だから臆病にならずに、仕事人生でも好きなことをしていこう、とお伝えしたいです。

いまの目標ですか? 「自分の心に従い、自ら動こう」という当社のビリーフスにとても共感しますし、良き仲間も尊敬すべき上司もたくさんいて、若い頃からのいろいろなことを受け止めてくれたこの会社は私の大の自慢です。だからこそ、「この会社にいると成長ができる」と皆が思える職場になるように、自分自身や会社が信じられる環境を作っていきたいと思います。

(佐々木玲子)

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