
「八戸愛」があふれる店 キンキやサバを店内で干物に
皇居脇に立つパレスホテル東京。隣接するパレスビル地下1階にある「丸の内 魚食家きんき パレスビル店」(東京都千代田区)は青森・八戸から直送した魚や郷土料理を出す東京都内でも珍しい八戸にこだわった店だ。店長の勝又達也さんは「お客さんからよく『青森のお店なんですか?』と聞かれますが、そのたびに『違います。八戸のお店です』と答えています」と笑う。

どんな料理が人気なのだろうか。勝又さんに聞いてみた。「まずは北の海でとれるキンキ、そして八戸の沖でとれる八戸前沖(まえおき)さば、さらにイカの姿刺しや郷土料理でウニとアワビのお吸い物であるいちご汁あたりがよく出ます」と説明してくれた。
店の名前にもなっているキンキは、高級魚として知られる。見た目からキンメダイと間違えられることが多いがカサゴの仲間だ。味はタイとは違って濃厚。ぎょろっとした黒目に鮮やかな赤い体、とげのある背びれなどインパクトのある華やかな外見で、祝い事などの席に特に好まれる。本店のある八戸から週に何度も東京の店に届く。
キンキを食べられるのは夜の時間帯のみ。7000円以上のコース料理にはキンキの塩焼きがつくのでお得。「キンキを食べ慣れた人ほど『安い』とおっしゃいます。かなり値段は抑えられていると思います」(勝又さん)
キンキと並ぶ看板メニューが、八戸前沖さば。いわゆる関サバなどと同じブランドさばで、八戸前沖さばブランド推進協議会が認定した期間に三陸沖以北の日本近海で漁獲され、八戸港に水揚げされたサバのこと。緯度が高く海水温が低い海で育つ八戸前沖さばは脂ののりがよくなる。お昼のメニューであるサバの漬け丼が人気。
キンキも八戸前沖さばも普通に焼いてももちろん美味だが、店ではある一手間をくわえることで格段に味のレベルをアップさせている。「秘密兵器」が業務用の冷風機だ。大手のスーパーなどには設置されていることもあるというが、普通の飲食店で見かけることはめったになさそう。「キンキや八戸前沖さばを塩漬けにしてから15~20分ほど冷風機の中で風をあてて余分な水分を飛ばし、ちょっと干物にするんです。そうすると、焼き上げたときのふっくら感が全然違うんです」(勝又さん)
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富山湾の王者ブリを堪能 コメどころの地酒と合わせ
日本海に面した富山湾は、魚種の豊富さから「天然のいけす」と称される。そこで水揚げされた新鮮な魚介類を中心に富山県の食の魅力を存分に堪能できる店が東京・日本橋にある「富山はま作」だ。県のアンテナショップ「日本橋とやま館」併設の和食レストランだが、アンテナショップの店と侮るなかれ。店内のしつらえもさることながら、腕をふるう浜守淳料理長のキャリアも折り紙付きでプレミアム感にあふれる。

春はホタルイカ、夏は白エビ、秋はベニズワイガニ、冬は寒ブリ――。富山には四季折々を代表する海の幸がある。約3カ月のサイクルで順次シフトしながら季節が巡る。これからの時期は寒ブリがうまい。激しい荒波を乗り越えて富山湾へとたどりついたブリは脂が乗り、味がよく鍛えられている。「富山湾の王者」の異名をとるのもうなずける。
ランチの「富山湾刺身定食」(1880円)や「温かい氷見うどんとます寿しセット」(1530円)、ディナーの海と山の幸を楽しむ「あいの風」コース(6980円)をはじめとした多彩なコース料理もいいが、この時期には「ブリづくし」コースを味わいたい。事前予約がいるが、寒ブリの刺し身、ブリ大根、ブリ雑炊などがセットになり、ランチは6980円、ディナーは1万2800円だ。ディナーコースの寒ブリの刺し身は厳選した3つの異なる部位の「三種盛り」が味わえる。昆布と酒でブリのアラや中骨を炊き、完全にアクが抜け透明になるまでとり続けて、ブリのうま味が凝縮した「ブリスープ」を大根に含ませた、ジューシーで上品な味わいのブリ大根もおすすめだ。
富山湾の新鮮な魚介類に浜守料理長の創意工夫が加わった絶品料理には、やはりコメどころ富山の地酒を合わせたい。県内の酒蔵から仕入れており、さまざまな味わいの日本酒がそろい、料理とのペアリングも楽しめる。富山名物のかまぼこやイカの黒作り、ホタルイカの沖漬け、ます寿し……。酒のさかなに合う一品料理もメニューに並ぶ。
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熟成させた魚のお造り 目利きの大将、客の好みを知る
ビジネスパーソンの憩いの場として知られる東京・新橋の路地に店を構える「魚屋 小次朗」。大将の小林真之さんは、仕事中はもちろん、休日も、家にいるときもとにかく魚、魚、魚の人だ。「河岸に魚を仕入れにいってね、休みの日でも釣りでしょ。家では熱帯魚を飼っていますから」(笑)。魚への愛情が並々ならぬ小林さんは「よく『旬の魚は?』とか言うじゃないですか。自分は旬うんぬんではなくて、うまそうな顔をしているかどうかで買ってきます。いい魚は時期に関係なくいい魚なんです」と話す。そんな小林さんの目利きを頼りに魚好きが店に連日通ってくる。

新鮮な産地直送の魚を重視する派と、寝かせて魚のうまみを引き出す派がいるが、小林さんは後者。豊洲市場に通い詰め、ピンと来る魚を見つけると、例えばこのような具合で頭の中で計算を始める。「来週予約のお客さんの好みに合いそうだな。ちょうど4人だから、1本仕入れるとして、今から3日ほど寝かせておけばちょうどよい具合になるはず」。そこで仲買人に「この魚、取っておいて」と頼む。客が来店するころには狙い通り、熟成が進んでいる。あるいは買ってきた魚をさばいてみて、これは何日寝かせればいいのかと目星をつけ、真空パックなどで保存して客の来店を待つ。
「本日のお造り」「本日の煮付け」「本日の酒蒸し」といった具合に、品書きはシンプルだ。「お造りは外さないと思いますね。今日はこれがいいよとか、逆にこれはあまりよくないよとか正直に言っちゃいますけど(笑)。満足していただけると思います」(小林さん)。北の海の高級魚として知られるキンキの煮付けもおすすめ。「相当価格は抑えていますので、これはぜひ味わっていただきたいです」。また、品書きには載っていないが、予約のみ受付のコースもある。先付け、お造り、煮物、焼き魚、揚げ、酒蒸し、食事までで、「一通り食べるならコースのほうが安いです」。目安の単価は、食べて飲んで1万円でおつりが来るというイメージだ。
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