『つけ麺』の出汁は日高昆布と羅臼昆布を1対1の割合で使っている

ただでさえ工程に手間がかかる麺を、複数用意する徹底ぶり。ラーメンに対する田中氏の情熱は、どこまでも深く激しい。トッピングのチャーシューについても、「薫香」のさじ加減に気を配るなど、尋常でない視野の広さを見せる。「単にチャーシューに炭の香りを付着させるだけだと、薫香が必要以上にスープへと溶け出し、スープの持ち味が損なわれてしまいます。なので、提供する前の日にチャーシューをあぶり、ひと晩、冷蔵庫で休ませる。そうすることで、薫香が落ち着き、適度なあんばいとなります」

明確な理想像を抱き、具現化

近年、独学で新たにラーメン店を開業する人は減少傾向にあるとはいえ、これまで数多くの人がいた。が、ここまで一つひとつのパーツに明確な「理想像」を抱き、かつ、その理想を体現できる技量を備えた人は数少ない。

虎ノ門エリアはこれまで、他のエリアと比較して優良なラーメン店が相対的に少なく、「ラーメン不毛地帯」とされてきた。この10年で近隣の新橋・銀座エリアが激戦区となり、いつ虎ノ門の出番が来るかといったところだったが、『ロビンソン』の誕生で、ついに同エリアにも「春」が訪れたようだ。

まさに、長年にわたる眠りを覚ます「黒船」。そう断言しても、過言ではないだろう。「多くの方にご来店いただき、自分が手掛ける1杯に舌鼓を打ってもらえたら、これ以上の幸せはない」と田中氏。味については、この私が保証する。皆さんも万難を排し、ぜひ一度、足を運んでもらいたい。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。