
ライフスタイルの変化に合わせて、市場のスーツがどんどん多様化してきた今、実際に“買い”の1着はどれなのか? 王道のクラシックスーツから今どき高機能ビジネススーツ、休日にも使えるリラックススーツ、コスパに優れたスーツ……。本特集では、事前に各セレクトショップや百貨店に2021年秋冬のイチオシの1着をアンケート。その結果を基に一堂に集めたスーツたちを、ファッション業界のスーツ識者たちとじっくり見ながら大品評会。ジャンル別に、今、買うべきスーツ大賞を選出した。
冒頭の3カテゴリーでは、スーツの2大ご意見番にご登場いただき、実際にスーツの縫製やシルエット、細かなディテールまでじっくりチェックして大賞ラインアップを選定した。

クラシックスーツ大賞
まずは王道のビジネススーツから大賞を発表。ドレス業界を代表する目利きと名高いビームス中村さん&UA太田さん、そしてM.E.編集部の意見も交えて品評していこう。
「手間のかけ方が素晴らしい」―中村さん
■SOVEREIGN
ソブリンのドーメル別注生地スーツ
今年誕生した新モデル。ソブリンの中でも最高級グレードに属する「プレステージライン」の一着で、随所に手縫いが用いられている。ゴージ低めのクラシックなラペル、狭めのボタン間隔が特徴的で、アンダーステイトメントの美学が宿る中庸かつ上品なスタイルだ。22万円(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店)

ドーメルに別注した上質フランネル=左
15.7μという極細原毛を4本撚(よ)りで織った「15.7」をベースに別注。ミルド加工を施すことで、マットな風合いと柔らかさを実現している。
絶品のノボリをかなえる上襟の曲げ=右
台の上に置いてみると、非常に立体的な上襟に仕立てられていることがわかる。手間を惜しまずアイロンで丹念に曲げ、成形した証だ。

平澤 中村さん太田さん、ご参加ありがとうございます。きょうは事前アンケートをもとに編集部が絞り込んだ注目スーツをお二人に吟味いただきつつ、特に優れたものをジャンル別の「スーツ大賞」として紹介したいと思います。ちなみに、今回は大賞に選ばれたものの中で順位をつけることはしませんので、お二人が思う“ココが秀逸"という点を挙げていただければと思っています。
中村・太田 よろしくお願いします。
平澤 ではクラシックスーツ部門から。今季のニュースとしては、ソブリンのブランドリニューアルに伴った新モデルの登場が印象的でした。
太田 これはソブリン史上最も完成度の高い一着だと自負しています。手縫いやアイロンワークを多用した「プレステージ」ラインのもので、生地もドーメルに別注しました。
中村 うーん、これは手間がかかってますね。上襟をアイロンで丁寧に曲げて、首に吸い付く着心地にしている。ポケットの玉縁も柔らかくて、身頃が体にぴったり沿います。見返しの縫製もボコボコしていないし、お台場が小さくて美しい。
太田 ありがとうございます。UAが厚い信頼を寄せるファクトリーのなかでも、えりすぐりの熟練職人だけが縫製を担当しているんです。

「仕立ての質はイタリアでも屈指」ー太田さん
■GIANFRANCO BOMMEZZADRI
ジャンフランコ ボメザドリのダブルスーツ
格調高いダブルブレストながら、ほのかなカーブを描くラペルが柔和さも感じさせる一着。素材はビスポークテーラーからも評価の高いホーランド&シェリーのキャバリーツイルで、りりしいハリ感が立体美を引き立てている。ベーシックなネイビー無地だが際立つ存在感を宿したスーツだ。25万8500円(グジ 東京店)

フラワーホールも極めて精緻
ブランドの美意識が表れるフラワーホール。ボメザドリのそれは非常に精緻で、細部まで手を抜かない仕立ての姿勢を象徴している。

平澤 中村さんがここまで褒めるのは珍しいですね。では続いてボメザドリはいかがでしょう?
中村 パルマにあるファクトリーを訪ねたことがありますが、とてもいい仕事をしていました。50人くらいの小規模工場で、手仕事の分量が多い。僕もここのスーツを何着か所有しています。

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