都知事の「買い物は3日に1回」受けてユニークなメニュー

エレガントで独自の解釈が加えられた「下村版フレンチ」(画像提供:Edition Koji Shimomura)

しかし、ランチでもアルコールを飲めば2万円は超える高級店である。新型コロナウイルス感染拡大前は、こうした店の売り上げはハレの日利用やビジネス客、観光で来日するアジアの富裕層などに支えられていた。コロナ禍で接待やインバウンドの需要が消滅してからは、どうやって乗り越えたのか。

長きにわたる自粛期間中、テレビで惨状を訴える飲食店関係者は多かった。しかし下村さんは、独自の視点で次々と打開策を考え出した。

「僕は難局に強いんです。人生で一回だけ精神的に落ち込んだことがありますが、前の店(港区にあった老舗フランス料理店『レストランFEU』、現在は閉店)のシェフを辞めてこの店の開業までの数カ月間、そのときだけです。20代のフランス修業時代はシェフや同僚と戦ってきましたし、この店の開業後もある年理由がわからずミシュランの星をゼロにされるなどいろいろありましたが、乗り切ってきました」

20年3月、下村さんはスタッフの研修旅行でバンコクにいた。まだ日本の飲食業界でコロナによる大きな影響は出ていなかったが、タイでの不穏な動きを見て「これはまずい」と直感したという。帰国後、早々にオンライン販売の準備に取りかかる。メニューを考え、写真も撮ってテスト販売を実施。「いけるのでは」と手応えを感じ、4月21日にサイトを公開し、販売をスタートした。

東京都には4月7日から5月25日、1回目の緊急事態宣言が発令されており、飲食業界のみならず、日本全体が対策に右往左往していた時期だ。下村さんのアクションは早かった。とはいえ、「この時期、『個室なら大丈夫』というお客さまや、予約も変わらず入り続けていて、お断りするのは非常に苦しく、心が揺れていましたね」と振り返る。

「エディションのまかない食」が大ヒット(画像提供:Edition Koji Shimomura)

下村さんは緊急事態宣言の解除より長めの、6月9日までの自主休業を断行。テーブルクロスをすべて取り払い、客席は完全に配送拠点に切り替えた。厨房で料理を作っては、スタッフ全員で発送作業に専念した。

その目玉となったオンラインの商品は、「エディションのまかない食」をイメージした冷凍の「2人前 × 3日分のお料理BOXセット」(2万5000円)だ。小池百合子都知事が「スーパーでの買い物は3日に1回に減らしましょう」とテレビで繰り返していたのを見てひらめいたという。下村さん考案の絶妙なネーミングだ。

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