脱一本足へ「NEXT養命酒」 薬酒技術でジンやハーブ酒養命酒製造(下)

クラフトジンは飲み方の選択肢が多い

オンリーワンの看板商品を強みとする「単品経営」の代表的企業といわれてきた、薬酒メーカー最大手の養命酒製造が商品ラインアップを急速に広げ、消費者との距離をぐっと縮めつつある。薬酒造りのノウハウを注ぎ込んだクラフトジンやハーブ酒(リキュール)はファン層を広げ、世界的な賞も受けた。江戸幕府の誕生より1年早い1602年の創製という看板商品の「薬用養命酒」を変わらぬ軸に据えながら、門外不出の生薬関連技術を縦横に生かし始めた。(前回記事「養命酒が「ゴルゴ13」の依頼主?創業400年老舗の深謀」

日本のウイスキーが相次いで最高賞を受賞したことでも知られる国際的な酒類品評会「インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション」。その2021年審査で、クラフトジン「香の森(かのもり)」が金賞を受賞した。出品したのは養命酒製造。同社のクラフトジン「香の雫(かのしずく)」も銅賞を受賞した。

「香の森」はクロモジと18種類の植物成分を組み合わせたジンだ。上質な爪楊枝に使われるクロモジは日本固有の香木で、「香の雫」にも配合されている。

養命酒製造が商品の多角化に動いたのは、1980年代初めに売り出したみりんが最初だ。今では酒類だけでもクラフトジンのほか、ハーブ酒、ショウガ酒、高麗人参酒など、多彩な品ぞろえ。食品にものど飴、グミ、酢、ミネラルウオーターなどがそろう。

マーケティング部コミュニケーションマーケティンググループの鳥山敦志グループリーダーは「ビタミンやサプリメントが日本市場に持ち込まれ、薬用養命酒を取り巻く環境が変化し始めたのを受けて、新たなメリットや価値を提案する時期を迎えた。薬酒で培ったノウハウを生かして、時代に見合った商品を企画していった」と、一本足打法から転じた事情を説明する。

もともと第2次大戦後の深刻な栄養不良を背景に、一般家庭へ浸透が進んだ経緯がある。その後、「飽食の時代」を迎えて、かつての宣伝文句だった「滋養強壮」の掛け声もやや色あせて聞こえるようになる中、80年代にはサプリや健康食品に加え、エナジードリンクの市場が広がり、さらに競争相手が増えた。

ハーブ酒はホットで飲む楽しみ方もある

一方、長時間労働やエアコン普及などから、疲れや冷えに悩む現代人が増える傾向に。体を温めることによって、自然な抵抗力を引き出す「温活」に関心が高まってきた今では、「ショウガを使った『生姜のお酒』を買い求める女性が増えている」(マーケティング部商品企画開発グループの加藤参チームリーダー)。

同社が本格的に「薬用養命酒」以外の酒類を企画し始めたのは、2010年に発売したリキュール「ハーブの恵み」が最初だ。10周年の節目を迎えた20年に「夜のやすらぎ ハーブの恵み」とリニューアルした。15種類のハーブから成分を引き出し、夜のリラックスタイム向けとして提案している。

「薬用養命酒」とは違って、ストレート、ロック、ジュース割りなど、様々な飲み方を選べる。加藤氏は「寝る前に飲む楽しさや、心がなごむ健やかさなど、成分だけではないメリットが広く受け入れられた。自分をいたわる意識の浸透もニーズを呼び込んだ」と、10年間での広がりを振り返る。「夜のやすらぎ」を商品名に加えたのも、ユーザーの取り入れ方を受けてのことだ。

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飲み方の自由度が高いハーブ酒
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