
皇居のお堀やビジネス街、国立劇場など周辺環境に恵まれた半蔵門・麴町エリアに、2019年1月にオープンした「半蔵門ビストロブレインストーミング」。ビル地下1階の店を訪れると、共同オーナーの近藤貴史さんが人懐こい笑顔で出迎えてくれた。
オープンしてほどなく新型コロナウイルスが日本中で猛威をふるい、緊急事態宣言の中での営業制限を余儀なくされた。それでも常連客に支えられ、コロナ禍を乗り切ってきたという。
同店の売りは、5年ごとの和牛の全国品評会で2017年に肉質1位となった鳥取和牛を使った料理。次回開催は22年なので、現時点で鳥取和牛は肉質では全国ナンバーワンと言える。
近藤さんによると、鳥取和牛は大量生産ではなく、東京都内に出荷されるのは月間12~13頭。コロナ下でさらに減り、直近では7~8頭のみという。「都内への出荷分の3分の1をうちのお店が仕入れています。東京で最も買っています」と近藤さん。実績が認められ、鳥取県牛肉販売協議会から今年10月に購買者賞を贈られた。

鳥取県は、口溶けの良いオレイン酸の含有量が55%と高い牛を「鳥取和牛オレイン55」として売り出すなどブランド戦略に力を入れており、全国的な認知度も次第に高まってきている。
それでも、都内で鳥取和牛を食べられる店は、まだ数えるほど。どんな特徴があるのだろうか。近藤さんに聞いてみた。「とにかく素材がよく、肉自体にうまみがあります。サシの部分は甘くとろけてしつこくないですし、赤身も硬すぎず柔らかいですね。一般的には硬めの、腰のあたりのランプやイチボも柔らかいです。もともと柔らかいヒレの中のシャトーブリアンなんかは最高だと思いますね」
鳥取和牛のステーキを実際にいただいた。初めての経験だ。肉の周辺をパリッとさせるような焼き加減で、近藤さんの言う「肉自体のうまみ」が内部に向かってぐっと凝縮されたような味。だからなのか、ずっとそしゃくしていたくなるような1品だった。

鳥取和牛のリブロースをスライスした「すきしゃぶ」も人気だ。割り下を加え、卵黄を乗せて食べる。鳥取和牛と生雲丹(ウニ)とイクラが乗った土鍋ご飯もよく出る。「よく痛風鍋と言われます」と笑う。ご飯一合、茶わん2杯分でシメに最適だ。
