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海の課題を解決 高校生が考えたオリジナル缶詰とは

黒川博士の百聞は一缶にしかず(19)

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NIKKEI STYLE

東京都内で今年10月10日、熱い缶詰バトルが繰り広げられた。高校生が自ら開発したものをアピールして競う「日本財団 LOCAL FISH CAN(ローカルフィッシュカン)グランプリ2022」(一般社団法人 全国道文化交流機構主催、日本財団 海と日本プロジェクト共催)。舞台はその決勝戦だ。

"ローカルフィッシュ"とは、地域で課題になっている未利用魚などを指す。缶詰にすることで一般の人にも興味を持ってもらい、海そのものに関心を抱いてほしいという願いが込められている。

予選を突破して決勝戦に臨んだのは10チーム。審査項目は味だけでなく、ラベルのデザイン、課題の理解度、地域の人をどれだけ巻き込めたかなど多岐にわたる。平均して点を得るのは難しく、開発コンセプトは素晴らしいが、地域との連携が他チームより及ばないといった理由で受賞を逃がしたケースもあった。

審査員は生物ライター・海洋研究者の平坂寛氏、タレント・料理家の英玲奈氏、フランチャイズ缶詰バー「mr.kanso」代表の川端啓嗣氏、日本財団 海洋事業部の西井諒氏と筆者が担当した。

最優秀賞に輝いたのは、鳥取県立境港総合技術高校(境港市)の「境港天然本マグロのほーるもん煮込み」だ。境港は生の本マグロ(クロマグロ)の水揚げ量で日本一を誇り、魚市場に行けばセリの様子を見学できる。同校のチームも見学に訪れ、内臓が抜かれてセリに掛けられていることに気付いた。内臓がその後どうなるのかを調べると、主に養殖魚の飼料にされていることを知る。食用に処理する業者がおらず、臭い部位もあるのが理由だった。

クロマグロは未利用魚ではないが、国際自然保護連合(IUCN)は「準絶滅危惧」に指定している。そんな貴重な魚なら「内臓も残さず食べるべきではないか」と感じた同校の生徒たちが、市場関係者の協力を得て胃袋を入手。あまりの悪臭に驚いたが、料理店の協力も仰ぎ、臭みを除去して煮込み料理にした。

ニンニクが利いたパンチのある味付けで、臭みはまったく感じない。まるで牛や豚のもつ煮込みを食べているようだ。缶詰としても良くできていたが、臭みを抜いた胃袋だけでも価値がある。素材として流通するようになれば、境港の新たな名物になるかもしれない。

優秀賞は大分県立海洋科学高校(臼杵市)の「ブダイの味噌煮」。近年、生息域を拡大しているブダイは各地で「厄介者」とされている。海藻を食べ尽くすために藻場(海藻が茂る場所)が消失し、他の魚介類が育たなくなるからだ。冬の時期は食用になるが、それ以外の時期は内臓に臭みもあるため駆除して捨てられている。

試行錯誤重ね、地元名産品も活用

去年開催された第1回グランプリでも、実は同校の先代チームがブダイを素材にして取り組んでいた。スパイスを活用することで臭みをマスキングしていたが、今年のチームは下処理の段階で臭みを除去した。丸ごと冷凍し、内臓を抜くと、その匂いが身肉に移りにくいことを発見したり、臭みを消す「霜降り」という技法を和食店から教わったり。試行錯誤の結果、臭みが激減しマスキングが不要となったため、定番味の味噌煮に仕立てることに成功した。大きめにカットされたブダイの身は歯応えがあり、大分県名産のカボスの皮も入れたことで、すっきりと爽やかな味だった。

長崎県立長崎鶴洋高校(長崎市)の「ナガサキイッカクハギのわからん(和華蘭)缶詰」はベストストーリー賞(海の課題、それに対する理解)だった。ナガサキイッカクハギはウスバハギの別名で、長崎県で次世代の養殖魚として期待されている。同県は主にブリやタイなどを養殖しているが、海水温度の上昇がもたらす影響で、今後はそれらの魚種がうまく育たない可能性がある。ウスバハギなら暖かい水温にも適応し、ブリやタイよりも成長が早い。おまけに味もいいということで、同校のチームは「いずれ県を代表するブランド魚になれば」という願いも込めて缶詰化した。

品名にある和華蘭は、和=日本、華=中国、蘭=オランダを意味し、各国の味がミックスした歴史ある長崎の独特の食文化を表している。同チームはさらにイタリアンのシェフにも協力を仰ぎ、最終的にはバターしょうゆとレモンに八角(スパイス)を利かせた味付けに仕上げた。塩味が少なくて魚の滋味が感じられ、八角の香りも異国情緒満点で良かった。

以下の2品は簡単な解説だけになるが、ご了承いただきたい。

地域巻き込み賞(地域連携)を受賞したのは、関西学園岡山高校(岡山市)の「アロス・カルドッソ・デ・マンティス・キャマロン~シャコの地中海風リゾット~」。外海との接続が少ない瀬戸内海は、海水の入れ替わりが進まずヘドロがたまりやすい。そんな海の底で生息するシャコに着目し、地元の海の課題を知ってほしいと缶詰化した。軟らかいごはんは食べやすく、シャコのうまみがぎゅっと詰まっている。身だけでなく殻を粉末化し、ダシに使ったのが秀逸だった。

情報発信サイトでの活発な活動と発信で「缶カツ賞」を受賞したのは、愛媛県立南宇和高校(愛南町)の「イワシンボル イワシのキムチチャーハン」。傷みが早い等の理由であまり食べられていないウルメイワシを使い、キムチ味のチャーハンに仕立てた。ごはんは歯触りが残る程度の炊き具合で、味のバランスがいい。ウルメイワシのうまみが全体に行き渡り、キムチの酸味ともよく合っていた。

最後に、受賞は逃したが印象に残った缶詰を紹介したい。三重県の代々木学園代々木高校(志摩市)のチームが造った「ワラサのスイーツ缶(幸せのみたらし団子)」で、何と団子にワラサ(ブリ)のすり身を混ぜこんだ意欲作。日本では、漁獲された魚類の約3割が捨てられているという。同チームは「魚の命も大事」と考え、誰もが好むスイーツにすれば、魚を無駄なく活用できると考えた。確かに魚の香りはするが、嫌なものではなく、だしが利いた砂糖しょうゆという感覚。団子には焦げ目が付き、香ばしく、商品化されてもおかしくないクオリティーだ。来年もまたグランプリに臨んでほしい。

(缶詰博士 黒川勇人)

黒川勇人
1966年福島市生まれ。東洋大学文学部卒。卒業後は証券会社、出版社などを経験。2004年、幼い頃から好きだった缶詰の魅力を〈缶詰ブログ〉で発信開始。以来、缶詰界の第一人者として日本はもちろん世界50カ国の缶詰もリサーチ。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認。

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