コンセプトは「変化を楽しむ」

BnA-WALLの大きな壁はアーティストの作品で、制作過程もそのまま公開している ©Takeshi Sasaki

東京の日本橋は江戸時代、日本橋川を利用した物流の要衝として栄え、周辺には現在の百貨店につながる呉服店が店を構え、にぎわいを見せた。そんな日本橋を舞台に、かつて繁栄した水辺の街を再生すべく、官民一体で今、「日本橋再開発プロジェクト」が進む。そんな変貌する日本橋の一端にある呉服商社ビルが21年4月、アーティストスタジオやカフェ・バーも併設したクリエイティブなアートホテルに変身したのが「BnA_WALL(ビーエヌエーウォール)」である。

エントランスを入って、地下まで見下ろせる高さ6メートルある吹き抜け全面の壁画にまず驚かされる。この壁画は約2カ月に1度、アーティストによって描き変えられる。タイミングによっては、制作過程を見ることもでき、まさに「変化を楽しむホテル」なのだ。

壁画はストリート・アート系の若手アーティストを中心にBnAチームで誰に描いてもらうかを決めている。次世代のアーティストに自らの作品を発信する場を提供し、はばたくきっかけにしてほしいという願いも込めている。また、地下のスペースも若手アーティストに貸し出している。

全26室はすべてアートルームで、それぞれアーティストが個性を競ってプロデュース。床や壁、天井の形や素材などの空間をはじめ展示作品や家具、カーテンなどのインテリアまで全体がアート空間になっている。

ベッドヘッドに描かれた人の顔。鼻から出ているのはティッシュと照明スイッチのひも ©Tomooki Kengaku

たとえば、杉山純氏と宮澤謙一氏によるアーティストユニット「magma」による「HARDCORE GAME ROOM」は、大人になっても仕事や趣味にやりがいや熱中できるゲーム性を見いだす「人生はGAMEだ!」がテーマ。壁には駒が動かせるオセロ盤、目視だと分からないが写真だと浮き上がる絵があるほか、実際に遊べるバスケットゴールなどいたるところに遊び心があふれている。

アプリを通して、音声ガイドによる作品紹介プログラムも聞くことができ、アートがより身近に感じられる。宿泊費の一部は、アートルームを制作したアーティストに還元されるという。泊まることで、アーティストの支援もできるというユニークなホテルなのである。

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美術館のようなホテル