東南アジアのユニコーンはどう抽象化して事業構想したか
坂田氏による第2部になると、この思考法に沿って東南アジアのビジネス事例が分析される。バイクタクシーの配車サービスから始まったインドネシアのユニコーン、コジェックがどのように抽象化して課題を据え、具体的な事業を構想したか。常温でも腐らない還元牛乳が当たり前だったベトナム国民においしい冷蔵牛乳を届けるビジネスを成功させたTHミルクの全体構想とは……。事例の分析は第1部で示された全体構想プロセスに沿って行われ、思考の助けになるフレームワークなども活用される。思考法の理解が深まるとともに思考法のトレーニングにもなる構成だ。
「細谷氏が著者ということで手に取る人が多いようだ。このところ思考法の本が売れ筋になることが多い」と同書店でビジネス書を担当する川原敏治さんは話す。思考力の普及を自らのミッションとしている細谷氏らしく、「おわりに」では「実際の思考方法を変えて、考えたことをアクションに結び付けて頂きたいと切に願います」と述べ、習慣化するための日常の工夫まで提案している。
『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学』が1位に
それでは、先週のベスト5を見ていこう。
(1)サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学 | 阿部誠監修(新星出版社) |
(2)会社四季報 業界地図2022年版 | 東洋経済新報社編(東洋経済新報社) |
(3)日経業界地図 2022年版 | 日本経済新聞社編(日本経済新聞出版) |
(4)心理的安全性のつくりかた | 石井遼介著(日本能率協会マネジメントセンター) |
(5)マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX | 黒川通彦ほか編著(日本経済新聞出版) |
(八重洲ブックセンター本店、2021年9月3~9日)
1位は行動経済学を解説したビジネス教養書。4月末に本欄の記事「『サクッとわかる』ヒット連発 地政学に行動経済学も」で紹介した本で、息の長い売れ筋になっている。2、3位に定番の業界研究ムックが並ぶ。4位は、グーグルの研究で注目を集めた心理的安全性について、日本のビジネスの現場でチームに働きかける手法を体系的に教える一冊だ。2020年9月刊の本で、やはり息長く売れている。5位はマッキンゼーによるデジタルトランスフォーメーション(DX)成功の要諦を説いた本。表には入っていないが、紹介した思考法の本は6位だった。
(水柿武志)