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答えと解説

正解は、(2)ウソ です。

「眠りの周期は90分なので、睡眠時間を90分単位で設定するとすっきり目が覚める」という話を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。しかし、睡眠に悩むビジネスパーソンを数多く診察している青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長の中村真樹氏によると、この俗説は誤りです。

睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があり、これが交互に現れます(下図)。ちなみに「レム」とは「Rapid Eye Movement」の頭文字を取ったもので、直訳すれば急速眼球運動。レム睡眠中はまぶたの下で眼球がきょろきょろと動いていることから名付けられました。このとき夢を見ていることをご存じの方も多いでしょう。

図 睡眠のサイクル

睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠を交互に繰り返すが、そのサイクルには個人差があり、疲労の度合いなどによっても日々変化している。(中村氏提供資料より作成)

ノンレム睡眠は深さによってN1からN3まで3段階に分類されます。「ノンレム睡眠、イコール深い睡眠だと思われていますが、これも誤解です。ノンレム睡眠には深い睡眠も浅い睡眠もあり、それぞれ脳波の形が全く違います」と中村氏は話します。

寝入って20~30分後に現れるN3が最も深い睡眠で、起伏の少ない脳波の形状から「徐波(じょは)睡眠」とも呼ばれます。これは脳が発達した霊長類に特有の睡眠とされ、ノンレム睡眠の中でも最も重要な部分です。

眠りに落ちると、20~30分後に最も深いN3が現れ、そこから徐々に眠りが浅くなっていき、60~70分後にレム睡眠が始まります。レム睡眠が10~30分持続した後、再びノンレム睡眠へと向かっていきます。このノンレム睡眠から次のノンレム睡眠までのサイクルは、平均すると90分程度になります。そして浅いレム睡眠のときに目覚めると、すっきり目覚められます。ここから「眠りの周期は90分」「90分単位だと起きやすい」という俗説が広まったわけです。

しかし、「90分というのはあくまで平均値であって、個人差も大きい上に、同じ人でも疲労度などによって変わってきます。睡眠不足が続いていると、最初のサイクルが120分くらいに延びることもあります。ですから、90分の倍数、つまり3時間とか4時間半だと起きやすいというのも誤解です」と中村氏。

中村氏によると、最も深いN3は眠り始めの2時間ごろまでに集中的に現れ、その後はだんだん睡眠が浅くなっていきます。N3を含むノンレム睡眠は、体と脳の疲労回復のために必要な睡眠で、レム睡眠は記憶の整理が一番の役割と言われています。

「浅い睡眠で長時間だらだらと眠るよりも、短時間でも“深く眠る”方が疲れも取れる」、「睡眠は量よりも質が大事だ」と言われることもありますが、「深い睡眠、浅い睡眠にはそれぞれ役割があり、睡眠には浅い睡眠も必要不可欠です」と中村氏は話します。単に眠りが深いだけでは“質の良い睡眠”とは呼べず、十分な睡眠時間を確保することが大切です。

この記事は、「『睡眠は90分単位』は誤解、『浅い睡眠』も大事!…知っておきたい8つの新常識」(伊藤和弘=ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2022年8月29日付記事を再構成]

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