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経済のデジタル化によって仕事のあり方や必要とされるスキルが様変わりする中、「リスキリング」「人材投資」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。一部の企業は従業員のリスキリングに力を入れ始めています。しかし、マネックスグループ社長の松本大氏は「会社が学ぶ機会を提供するだけならお金の無駄だ」と言い切ります。一体どういうことなのか、聞きました。

登用しないと意味がない

人材について考えるとき、「投資」と「登用」いう2つの側面がありますが、私はこれまでの日本企業にはその両方が欠けていたと考えています。もちろん「いやいや、うちは研修に力を入れてきました」とか、「我が社はオンライン講座も受け放題。資格取得の費用も補助しています」という会社もあるでしょう。しかし、学ぶ機会さえ提供すれば人材投資をしていることになるのでしょうか。

仮に若手社員が何らかの新しいスキルを身につけたとしましょう。でも彼らを、年功序列のおかげで出世しただけの能力に欠ける上司のもとに置いていたのでは、何の投資効果も得られません。

そういう上司は部下が身につけたスキルの意味も理解できないでしょうし、ましてや彼らを生かして新たなビジネスチャンスにつなげることもできません。

つまり、せっかく人材投資をしたのなら、それによって力を伸ばした人材を「登用」しないと意味がないのです。社員だって、せっかく頑張って勉強してもキャリアに結びつかないのなら、やる気もそがれるでしょう。人材投資と人材登用。その2つの視点が、従来の年功序列型の日本企業には決定的に欠けていたと思います。

でも、そもそも登用する気がないから投資もしてこなかったというのが実態なのかもしれませんね。日本企業が人材投資に熱心でなかったことは、国際比較のデータを見ても明らかです。日本では実質GDP(国内総生産)に占める人材投資額は1990年代半ばから年々下がり、2014年までの5年間の平均はわずか0.1%でした。これはアメリカの20分の1、ドイツの12分の1の水準です。

松本大 マネックスグループ社長

松本大 マネックスグループ社長

年功序列を守るためには、力をつけた若手が先輩を追い抜くなどという事態が起きては困る。だから人材投資はできるだけしない。それは、ある意味合理的な判断だったのでしょうが、結果として日本企業は競争力を失い、国の経済も低迷から抜け出せないまま30年が過ぎてしまいました。

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