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回転ずし「スシロー」の原点は大阪の立ちずしだった

回転ずし「スシロー」の原点は大阪の立ちずしだった

回転ずしチェーン「スシロー」の味と安さを支えるのは、強みとする食材調達力だ。磨き上げた店内オペレーションとIT(情報技術)システムが脇を固める。両立が難しいうまさと低価格で消費者を驚かせ続けるスシロー流の秘密を探った。(前回記事「スシロー、原価率50% 業界首位を支える薄利多売」)

スシロー恒例の販促フェアが始まったのは、今から約18年前。期間限定の目玉商品で話題を集めた。第1弾は1貫100円の中トロ。今でこそいくらか身近になったトロだが、当時から高級なすしネタの代表。原価率が約70%に達した薄利多売の企画だった。

「どうやったらそんな仕入れができるんだとよく聞かれた」と、「スシロー」を運営する事業会社、あきんどスシロー(大阪府吹田市)の堀江陽社長は振り返る。「1皿100円」での回転ずしへの中トロ投入は、業界関係者に強いショックを与えた。

低価格を実現する最大の秘密は、仕入れ力にある。スシロー流仕入れのキーワードは「丸ごと」。例えば、ヒット商品になった「天然インド鮪(マグロ)7貫食べ比べ」(税抜き980円、税込み1078円)は、1匹丸ごとの仕入れだからこそ、様々な部位を味わえる。

「天然インド鮪(マグロ)7貫盛」(税抜き980円)は平均で1つ140円の計算

「天然インド鮪(マグロ)7貫盛」(税抜き980円)は平均で1つ140円の計算

内訳は大トロ1つ、中トロ2つ、あぶり中トロ、赤身、漬けマグロ、端材を使ったたたき身が各1つの計7貫。高級部位の大トロから端材に至るまで、全身を無駄なく使い切っている。さらに、頭でラーメンのだしも取る。仕入れたマグロをマルチに生かし切っている。

味がよいのに、流通価格が割安の食材を賢く仕入れているのも、高いコストパフォーマンス感の理由だ。南半球でとれるインドマグロはその好例。「(クロマグロに比べて)メジャーではないが、おいしさでは甲乙つけがたいインドマグロをもっと知ってほしいと考えた」(堀江氏)という。漁業関係者たちの悩みを聞いたことから生まれたメニューだ。

水産物の仕入れ業務では昔から属人的なネットワークが幅をきかせてきた。漁業関係者と卸業者、飲食店それぞれの目利き同士が抱く信頼感やリスペクトが流通のベースになっていた。スシローがモットーとする、生産者サイドとしっかり向き合う仕入れも、かつては個人のマンパワーによるところが大きかった。代々の仕入れ担当者が受け継いできたノウハウは、仕入れのクオリティーを保つうえで最高レベルの「企業秘密」でもあった。

しかし、企業規模が大きくなれば、個人のスキルに支えられた仕入れにも限界が訪れる。スシローはさらなる成長を見込んで、2013年に取引先の営業担当者だったマグロとエビのプロをそれぞれ採用し、組織で仕入れる体制へと移行。外部のノウハウも取り込んだ、仕入れのスペシャリスト集団が誕生した結果、提供するすしネタにも新たな食材が増えていった。

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