「すしDX」でスタッフもネタも生かす

今では人気メニューに育った「天然インドマグロ7貫食べ比べ」だが、本格的に売れるようになったのは、近年のことだ。立ち上がりの時期は本マグロの認知度に勝てなかったのに加え、100円回転ずしにしては高い980円(税抜き)という価格設定も、なかなか支持を得られなかった理由だ。

各店オリジナルのマイクパフォーマンスで活気が生まれる

転機になったのは、注文そのものをエンターテインメント化するかのような、店舗での演出だ。「天然インドマグロ7貫食べ比べ」のような大皿メニューの場合は、スタッフが席までじかに届け、店内放送でも注文を受けたことをアピール。頼んだ客はちょっとした高揚感に包まれる。アナウンスの内容は各店舗のスタッフが創意工夫をこらしている。

こうした取り組みが受けて、「天然インドマグロ7貫食べ比べ」はスター的存在のメニューへと出世していった。堀江氏は「すし屋はもっと楽しくにぎやかであるべき。それは外食産業の存在意義でもある」と主張する。社長に就いて以降は「すし屋らしい活気あふれる接客」を現場に呼び掛けているという。

UAE(アラブ首長国連邦)のドバイで開催中の「2020年ドバイ国際博覧会」。ここに唯一の日本館レストランとして出店しているのがスシローの回転ずしだ。店内にはすしを運ぶ通常の「回転レーン」のほか、注文メニューをすみやかに届ける専用レーン「オートウェイター」も設置。厨房には鮮度管理や自動廃棄までコントロールする、世界初の「回転すし総合管理システム」を導入している。

スシローはすし業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)で先頭を走ってきた。シャリを握るすしロボットは1985年から導入している。タッチ式注文パネルもスシロー店舗ではおなじみの仕組みだ。

もともとは人手不足の解消を主に狙って開発してきた自動化技術は新型コロナウイルス禍を受けてニーズが高まった非接触型サービスの基盤ともなっている。徹底した非接触の安心感は好業績を下支えする一因だ。

動線を分けて、感染症対策を徹底

人工知能(AI)を使って画像認識技術で皿の数をカウントする「画像認識による自動会計システム」も導入。今後は「切ったりあぶったりといった、うまさに直結する業務にスタッフが集中できるよう、それ以外の業務ではAIを活用し、店舗運営を省力化していく」(堀江氏)という。 

店舗運営にかかるコストを抑えられれば、食材に回せる原材料費に余裕が出る。新たな調達先や食材の開拓にも取り組みやすくなる。価格帯に制約のある回転ずしに、さらなる可能性を追い求めるスシロー。食べる人とまっすぐ向き合うその姿勢には、創業当初の「立ちずし」の面影が残る。

(ライター 橋長初代)