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日経リスキリングサミットの座談会に登壇した岸田首相(東京・大手町)

日経リスキリングサミットの座談会に登壇した岸田首相(東京・大手町)

企業が人への投資を積極的に行う機運が高まる中、リスキリングについて多角的に考えるシンポジウム「日経リスキリングサミット」(日本経済新聞社・日経BP主催)が12日開催され、岸田文雄首相が座談会に出席した。岸田首相は官民あげてリスキリングを進めることの重要性を強調した。(司会=日本経済新聞社常務執行役員 内山清行)

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内山 皆さんこんにちは。日経リスキリングサミットいよいよ最後のセッションです。コーディネーターを担当する日本経済新聞社の内山清行と申します。どうぞよろしくお願いします。午前中からの議論を踏まえてリスキリングをめぐる日本の現状と課題、そして目指すべき方向性について議論をしてまいります。

日本経済新聞社常務執行役員 内山清行

日本経済新聞社常務執行役員 内山清行

登壇者を紹介いたします。まずSOMPOホールディングスの原伸一・グループCHRO(最高人事責任者)です。企業内大学を設立するなど社員リスキリングの先進企業と言っていいんじゃないでしょうか。次に、ベネッセコーポレーションの藤井雅徳執行役員。米国のユーデミーと連携して、オンライン教育プラットフォームを展開していらっしゃいます。そしてジャパン・リスキリング・イニシアチブの後藤宗明代表理事です。リスキリング分野の日本における第一人者ではないかと思っております。

最後に国会開会中に、駆けつけてくださった岸田文雄内閣総理大臣です。今ご紹介した3人の民間の方々ですね、ビジネスの世界では百戦錬磨ですが、総理を前にしてちょっと緊張してるようでございますので、まずはアイスブレイクの意味も込めて、総理に質問させていただきます。総理自身、リスキリングの体験ってございますでしょうか?

岸田首相

岸田首相

岸田 私はですね、大学卒業してからしばらく銀行員をやっておりました。その後、衆院議員になり、いろんな形で勉強や学び直しをやってはきましたが、振り返ってみますと、いわゆる「OJT」(オンザジョブトレーニング=職場内訓練)でして、今話題になってるリスキリングとはちょっと違ったのではないかなと思っています。しかし、それだけ今、大きな時代の変化の中で、リスキリングが求められている。私は新しい資本主義という経済モデルを掲げて、人への投資が大事だということに、そしてリスキリングの重要性を訴えている立場として、今日こうしてリスキリングサミットが行われること大変うれしく思っています。

内山 ありがとうございます。総理がおっしゃる通りですね、日本企業が得意だったこのOJTが、デジタル化やグローバル化の流れの中で段々強く通用しなくなってるんじゃないか。そんな気がいたします。ではあらためて、後藤さん、今日本が抱えているリスキリングの課題などを整理していただけますでしょうか。

リスキリングは組織や企業が実施すべきもの

ジャパン・リスキリング・イニシアチブの後藤宗明代表理事

ジャパン・リスキリング・イニシアチブの後藤宗明代表理事

後藤 「働き方」「学び」「お金」と3つの分野にわけてお話します。特に今問題なのは、リスキリングが個人の自主的な学び直しと混同されてしまっているという点です。欧米の成功事例を見てみると、リスキリングは就業時間内に組織や企業が実施すべきものなのですが、個人が帰宅後や週末に自主的に学ぶことと混同されています。デジタル化を推進することで効率をあげて業務を減らし、就業時間内にリスキリングの時間を確保する、これが今、働き方としては求められてるのではないでしょうか。

もう1つは、学びに関する問題です。よく日本人は学ばないと言われますが、そもそも業務を減らさずに学ぶ時間を確保するのが難しい状況にあるのではないでしょうか。また、学ぶことが得意な方ばかりではありません。学ぶのが苦手という方に対するリスキリングの支援も必要です。

お金に関してですが、リスキリングと報酬はセットで考えないといけません。また、誰しもがリスキリングをするためのお金の余裕があるわけでもありません。とりわけ中小企業などにおけるリスキリングに関しては、国や自治体からの支援が必要なのではないかと考えております。

内山 リスキリングは企業の責任であるという話だったかと思いますが、日本の企業も積極的にリスキリングに取り組んでいる動きがあります。原さん、いかがでしょうか。

価値観を会社から個人中心に変えていく

 我々SOMPOグループは祖業が損害保険事業です。そこから発展して、生命保険や介護事業、海外にも拡大しています。会社から社員に送っているメッセージは、社員一人ひとりのマイパーパス(自分の目的)が一番大切、というものです。それぞれのパーパスを実現するために会社という舞台がある。価値観を、会社中心ではなく個人中心に変えていくということに取り組んでいます。

SOMPOホールディングスの原伸一・グループCHRO

SOMPOホールディングスの原伸一・グループCHRO

そうしますと、社員一人ひとりが自らのキャリアをどうしたいのか、ということが中心になってきますし、会社としてもそれをしっかり後押ししていかなきゃいけない。そこで、公募制を導入し、ポストをどんどん増やしていく。また、会社の中にどんな仕事があるのか、必要なスキルはなんなのかをしっかりと分類して定義し、開示しています。そこではじめて、社員は「自分はあのポストの仕事をするためにどんなスキルを身につければいいのか」と考えます。当然、熱意も上がります。

内山 ありがとうございます。1つのカギが見えたような気がします。一方で、このような取り組みをできる企業が、いったい日本に何社あるんだろうとも思います。藤井さん、教育事業者としての立場からのご見解はいかがですか。

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