現場の社員たちの葛藤も

第3章は長期化が見込まれる中で、「身をかがめる覚悟」を決めた時期の動きを追う。機材数の削減や社員のセカンドキャリア支援・外部出向。その一方で事業ポートフォリオの多様化という再成長への種もまいていく。第4章は「挑戦」と題し、現場の社員たちの葛藤にきめ細かく光を当てる。機材切り売りに奔走する社員、建設コンサルに外部出向したグランドスタッフ、地方移住を決めた客室乗務員……。貨物ビジネスや機内食外販など新規事業に取り組む社員の姿も活写される。

第5章は子会社の格安航空会社(LCC)との連携、マイル事業、ドローン事業など、これからに向けた「ありとあらゆる手段で事業を成長させる」動きが描かれる。第6章は今後の経営課題から日本の航空業界のこれからまでを見つめていく。

危機対応の経営ストーリーとしても示唆に富むが、企業人の人間ドラマとしても面白く読める。「同じビルに本社が入っていることもあって、入荷直後からよく売れている」と店舗リーダーの河又美予さんは話す。

5位に稲盛氏の遺著

それではランキングを見ていこう。今回は9月の月間ベスト5を紹介する。

(1)「会社四季報」業界地図 2023年版東洋経済新報社編(東洋経済新報社)
(2)ANA苦闘の1000日高尾泰朗著(日経BP)
(3)営業1年目の教科書菊原智明著(大和書房)
(4)日経業界地図 2023年版日本経済新聞社編(日本経済新聞出版)
(5)経営12カ条稲盛和夫著(日本経済新聞出版)

(リブロ汐留シオサイト店、2022年9月1~30日)

1位と4位に定番の業界研究ムックの最新版が入る。毎年8月下旬に最新版が刊行されるため、9月のランキング上位の常連だ。今回取り上げたANAのドキュメントが2位だった。入荷は下旬だったので、お膝元ならではの初速で、10月第1週も2位と順調に売り上げを伸ばしている。3位は18年刊の営業の指導をしているセミナー講師による営業の指南書。5位には、本欄「カリスマ稲盛和夫氏の遺著 次代につなぐ経営の12カ条」の記事で紹介した稲盛和夫氏の遺著が入った。

(水柿武志)

ANA 苦闘の1000日

著者 : 高尾 泰朗
出版 : 日経BP
価格 : 1,980 円(税込み)