
サッポログループの食品・飲料事業を担うポッカサッポロフード&ビバレッジ(以下ポッカサッポロ)。「ポッカレモン」で知られるポッカコーポレーションと「Ribbonシトロン」などの飲料を販売していたサッポロ飲料が2013年に統合しスタートした企業だが、両社統合の大役を担ったのがポッカサッポロの現社長、征矢真一さんだ。就職してからは「立ち上げ」の仕事を数多く手がけ、「フグや生ガキなどのおいしさを教えてもらったのは会社の先輩たちのおかげ」と振り返る。それまでは「無難なもの」しか口にしてこなかったからという。
――ポッカサッポロの社長に就任されてこの春で丸2年になりますが、大学を卒業されて就職先としてサッポロビールを選ばれた理由は何だったのでしょうか。
元来ビール好きで、北海道好きだったことに加えて、不動産事業の仕事を手がけてみたかったからです。もともと地理が好きで、学生時代は旅行サークルに属していました。あちこち出向き、卒業までに行ったことがない都道府県は沖縄だけでした。北海道には毎年夏と冬の2回、欠かさず訪れており、道内各地をくまなく鉄道などで巡り、札幌ではよくサッポロビールを飲みました。
東京都渋谷区と目黒区にまたがる「恵比寿ガーデンプレイス」は元はサッポロビールの工場跡地です。就職活動をしていた時期は、その跡地再開発を当時のサッポロビールが計画・立案中だったタイミングで、ビール会社として「おもしろそうだな」と思ったのも確かです。大学は経営学部で、卒論のテーマは「日本的経営多角化の条件」でした。時はまさにバブル経済のはしりで、各企業はこぞって多角化に乗り出していました。都市開発に名のりをあげたサッポロビールもご多分に漏れずで、そんな事情も入社を決めた理由の一つでした。
――入社後は「立ち上げ屋」の仕事が多く、社会人になってご自身の味覚もずいぶんと鍛えられたとか。
入社後、初任地と職種の希望を書かされました。北海道好きだったので初任地の第1希望は北海道で、希望職種は営業か都市開発部門だったのに、実際は自分の希望とは正反対で、ひどい会社だな、と思ったものです。振り出しは九州の総務課でした。福岡・博多のど真ん中で3年過ごし、総務と経理の仕事に従事しました。先輩から仕事のイロハを教わり、貴重なことをたくさん学んだ時間でした。その後、東京本社の経理部に異動し2年ほどいましたが、どうにもつまらなくなり、社内の人材公募制度に応募したのが、振り返れば立ち上げ屋としての仕事のスタートです。
社内の人材公募制度とは新たな人材が必要な部署が社内公募で希望者を募るもので、「ウェスティンホテル東京開業準備室」に手を挙げました。そこでなら当初希望だった都市開発の仕事もできる、と思ったからです。晴れて希望がかない、職場を異動できたのは幸いでした。