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Z世代も魅了する 「サウンドバーガー」とは?

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日経クロストレンド

創業60周年を迎えたオーディオテクニカ(東京都町田市)が、2022年11月上旬に発売したある新製品が話題を振りまいている。ポータブル・アナログレコードプレーヤーの「サウンドバーガー」だ。販路をオンラインストアに絞り、発売するや即完売。12月1日の再販売でも瞬く間に売り切れた。なぜヒットしたのか、いったい誰が注目しているのか背景を探った。

場所を取らない小型アナログレコードプレーヤー

「サウンドバーガー(AT-SB2022)」は、オーディオテクニカが1982年に発売した同名のポータブル・アナログレコードプレーヤーを復活させた商品だ。本体にレコード盤を挟んで聴く独特なスタイルが、ハンバーガーに似ていることから愛称として名付けられた。

今回のサウンドバーガーは日本の他、欧米や東南アジアなどアナログレコード再生に対する熱が高い世界の各地域を対象に、数量限定で発売された。価格は2万3800円(税込み)と比較的手ごろ。しかもアンプやスピーカーをそろえなくてもBluetooth対応のワイヤレスヘッドホン・イヤホンを接続して簡単に「アナログレコードの音」が楽しめるとあって、発売日に即完売となった。

「サウンドバーガーの復活」は、オーディオテクニカの創業60周年を祝うアニバーサリー企画の一つとして浮上した。「数あるアイデアの中で、アナログレコードを知らない世代に、アナログレコードの魅力を伝えるためのコミュニケーションツールとしても、サウンドバーガーは最適という声が社内からも多く集まった」と、同社で商品企画を担当したマーケティング部プロダクトマネジメント課 コンシューマープロダクトグループ リーダーの國分裕昭氏が振り返る。

手持ちのBluetoothオーディオ機器を使ってシンプルに聴ける

筆者も11月上旬の発売日に運良くサウンドバーガーを手に入れることができた。我が家に届いてから、肩身が狭そうに書棚に並んでいたアナログレコードのコレクションを引っ張り出して毎日聴いている。

オリジナルのサウンドバーガーを知らないので、新旧モデルを比べることはできないが、復活したサウンドバーガーの手応えを一言で言えば、「しっかりとしている本格派のレコードプレーヤー」といった印象だ。

レコードを載せるプラッター(ターンテーブルの回転部)はアルミニウム合金製。ベルトドライブ方式による回転がとても安定している。A・B面に複数の曲を収録する大きなLP盤には33・1/3回転、両面1曲ずつのEP盤には45回転のレコードが多く、サウンドバーガーは各回転数のレコードを正確に回してくれる。

本体にスピーカーは内蔵していないが、Bluetoothに対応するヘッドホンやイヤホン、そしてワイヤレススピーカーなどに接続して手軽にアナログレコードの音が聴ける。サウンドバーガーはコンパクトで持ち運べるサイズなので、昔ながらのアナログレコードプレーヤーよりも置き場所を取らない。さらに約12時間の連続再生が楽しめる充電式のバッテリーを内蔵しているので、室内を移動しながら聴いたり、友人の家や屋外にも持ち出せたりする。

レコードから「音が鳴る」こと自体が新鮮

オーディオテクニカは22年11月上旬、創業60周年の記念行事の一つとして「Analog Market」と題したイベントを都内で開催した。サウンドバーガーの試聴と先行販売のコーナーにも大勢の来場者が集まったという。具体的にはどんな反応が寄せられたのだろうか。

國分氏によると「従来のオーディオファンだけでなく、ポップカルチャーやファッションとしてレコードに興味を持つ若い来場者がサウンドバーガーに関心を寄せた」と話す。特に20~30代前後のいわゆるZ世代を中心とする来場者から「レコードは持っているが、音が鳴るものだと思わなかった」という声があったことに國分氏は意表を突かれたという。レコードを挟み込んで回転させる、サウンドバーガーの独特な再生方法に対しても、若い来場者たちは斬新と受け止めていたようだ。

アナログレコードをよく知る50~60代の来場者にも、復活したサウンドバーガーは好評だったという。彼らにはレコードプレーヤーは置き場所を取るオーディオ機器というイメージがある。その点サウンドバーガーはコンパクトで、ワイヤレススピーカーなどにつないで楽しめる手軽さもあり、既にプレーヤーを手放してしまった「かつてのアナログファン」の物欲を大いに刺激するようだ。

オーディオテクニカではサウンドバーガーの他にもBluetooth対応のアナログレコードプレーヤーを複数商品化している。それぞれ売れ行きも好調であることから、「アナログの音をワイヤレスで聴くことについての違和感や抵抗感みたいなものは、音楽ファンの間でも少しずつ薄れつつあるようだ」と國分氏は受け止めた。

シンプルさとファッション性が受け入れられた

サウンドバーガーの発売に合わせて、オーディオテクニカではYouTuberをはじめとするインフルエンサーの協力を得て、製品プロモーションを展開した。その成果もあり、音楽やガジェットを愛する若い層からの反響が次第に高まっているという。

アナログレコードを再生する仕組みは、レコード盤に刻まれた細い溝にプレーヤーの針が触れて、発生した振動を電気信号に変換、アンプで増幅して音を出すというものだ。その際、ノイズ源ともなる不要な振動を断ち切ることが、「良い音」でアナログレコードを楽しむポイントとなる。そのため、振動を生むスピーカーをプレーヤーに内蔵することは、オーディオを知るファンからは歓迎されなかった。

その一方で、若い音楽ファンを中心に「好きなレコードを、手間をかけずにシンプルに聴きたい」という声も少なくなかった。そこで國分氏は、アナログレコードプレーヤーの商品企画に関して、より柔軟な発想が大事と考えるようになったという。

簡単・便利な音楽配信サービスが全盛を迎えた今日、アナログレコードプレーヤーにシンプルに楽しめる工夫やファッションの要素も採り入れることで、若い音楽ファンの期待に応えられることをサウンドバーガーは証明してみせた。今回のヒットを機に、オーディオテクニカにはサウンドバーガーをレギュラーモデルとして復活させることや、シリーズ展開にも挑戦してもらいたい。

(文・写真 ジャーナリスト兼ライター 山本 敦)

[日経クロストレンド 2022年12月20日の記事を再構成]

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