「いつもふらっとお付きの人と来て何着も色違いでお買い上げになってね、ある時、『黒があるはずなのですが、ありますか?』って言うんだけど、当時はバラクータG9の黒なんてボクも見たこともなくて、輸入元に問い合わせて必死に探したよ」

「おしゃれエピソード」尽きない健さん

結局バラクータG9の黒なんて当時はどこを探してもなくて、後でわかったらしいが、健さんはイタリアのどこかのセレクトショップが別注したモデルを海外に行った時にたまたま見かけたんだそうだ。これが30年以上も昔の話というのもすごいではないか。

本当におしゃれだった高倉健さんには実はこういったエピソードが他にもたくさんある。高倉健さんの訃報がニュース速報で流れたあの日、セプティズの玉木氏の他にも業界の名だたる重鎮から「私も健さんを接客しました」という高倉健さんを悼むコメントが続々と筆者のフェイスブックにアップされました。

同じサイズのバラクータG9でも昔といまではシルエットが違う。東京・三軒茶屋のセレクトショップ「セプティズ」オーナー、玉木朗さん(右)が着ているのは健さんと同型、1970年代のもの。白木凜太郎さんが着る現行モデルはシェイプがやや細めだ

例えば、元『マルセルラサンス代官山店』の店長で、現在は渋谷の『rdv o globe(ランデブー・オー・グローブ)』のオーナー兼デザイナーの前淵俊介氏からのコメント。

「時間が空くといつもお気に入りのマイカーを運転してお店に遊びに来てくれました。ラサンスのスエードのブルゾンを20色ほどパリに特別にオーダーしたのを思い出します。大変お世話になり、楽しい思い出でいっぱいです。ご冥福をお祈りいたします」

他にも、現在も吉祥寺のセレクトショップ『アール吉祥寺』の店頭に立ち、伝説のセレクトショップ六本木の『エミスフェール』や原宿の『スーパーボール』の店長だったレジェンド販売員、中村隆一氏からのコメント。

「その方は突然、僕の前に現れました。お店で綺麗(きれい)な色のニットを数枚購入された後、近くにコーヒーを飲める店はないかと尋ねられたので2軒先のカフェに案内しましたら、一緒に飲もうとお誘いを頂きご一緒しました。その店は神宮前にあった今はなきスーパーボールで、その方とは高倉健さんでした。六本木のエミスフェールにも何度かお見えになり、パリの本店にもよく来られました」

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