貫いたアンダーステートメント

バラクータG9もそうだが高倉健さんはカジュアルなショート丈のブルゾンを好んでよく着ている。そういえば確かSMAPの『SMAP×SMAP(スマップスマップ)』のビストロスマップに出演した時にもスエードのブルゾンにチノパンツを合わせていた。ちなみにマルセルラサンスのスエードのブルゾンは、筆者も健さんのようにチノパンにスエードのチャッカブーツを合わせてよく着ていた。あんな風にとても着こなせなかったですけど……(恥)。

オリーブドラブのM-65(東京・三軒茶屋のセプティズ)

後年の主演映画やテレビドラマで見られた、決してこれみよがしではない”アンダーステートメント”な格好は、当時よく訪れていた『ビームスF』で高倉健さんの担当だった販売員で、現在はスーツを中心としたスタイリストをしている登地勝志氏が専属でスタイリングをしていたという。

例えば『ホタル』や『単騎、千里を走る。』で着ているM‐65は、おそらく『アルファ』のレプリカ製のものと思われる。しかしそこは健さんだ、OD(オリーブドラブ)やカーキではなく黒のM‐65をセレクトしているところが流石(さすが)である。しかもM-65にしてもバラクータG9にしても、あえて1サイズ大きめを好んで着ていた。この着こなしは普通の人がまねをしても絶対に格好よく見えるわけがない。高倉健だから格好いいのだ。ちなみにセプティズの玉木氏は、『野性の証明』でL.L.ビーンのコーチジャケットにシャンブレーシャツを着て薬師丸ひろ子を抱き抱える健さんのアメカジが一番格好よかったんだそうだ。

役者も着こなしも生き方も、アンダーステートメントを地でいっていた高倉健さん。そのコンサバな着こなしがもう二度と見られないのが、7年たった今も残念でならない。バラクータG9といったらスティーブ・マックイーンじゃなくて高倉健なのだ。

いで あつし
1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られライター、コラムニストとしてメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「ビギン」、「MEN’S EX」、JR東海道新幹線グリーン車内誌「ひととき」で連載コラムを持つ。

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