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TsugiTsugi経由で申し込んだカキ漁体験(宮城県気仙沼市)

TsugiTsugi経由で申し込んだカキ漁体験(宮城県気仙沼市) 

新型コロナウイルス禍以降、自宅か東京都内のオフィスの席でひたすらパソコン画面に向かって仕事をしている。「取材は実際に会って」「外出は積極的に」という編集者の習慣は薄れつつある。ビデオ通話システムやチャットサービスも充実し、たいていの仕事は席に座ったままですんでしまう。

私と同じような働き方をしている方は、きっと多いはず。しかし、ときどき思わないだろうか。「外に出て、思い切り環境を変えたい!」と。どちらかというと1カ所にとどまるのが苦手な私の心は、悲鳴をあげかけていた。

TsugiTsugi

×OFFICE PASSで「旅しながら働く」を実現

そんな中、日本経済新聞社が提供するシェアオフィスのマッチングプラットフォーム「OFFICE PASS(オフィスパス)」が、東急が運営する定額制回遊型住み替えサービス「TsugiTsugi(ツギツギ)と提携するという話が飛び込んできた。

気分や都合に合わせて好きな場所を選んで、東急ホテルズをはじめとする各地のホテルに泊まれるTsugiTsugiと、全国のシェアオフィスやコワーキングスペースを予約なしで好きな時に使えるOFFICE PASSを組み合わせたサービスを作り、「旅しながら働く」ワークスタイルの普及を目指すという。

オフィスパス事業を担当する同僚から、NIKKEIリスキリングの編集者である私に体験記を書くよう依頼があり、喜んで引き受けることにした。「えらべる5」という、30日間で5泊、好きな場所を選んで泊まれるTsugiTsugiのプランに、OFFICE PASSの5回分利用権がついた50,000円(税込み)のセットを体験した。

TsugiTsugiの申し込みページ

TsugiTsugiの申し込みページ

TsugiTsugiのホームページにログインし、宿泊施設と宿泊日を指定するとあっという間に予約できた。OFFICE PASSのほうも、会員証の代わりとなるQRコードをスマートフォンに表示できるようになり、これでいつでもオフィスを利用できる。

都内のホテルに泊まり、いつもとは違った環境でどう働けるのか、行ったことのない土地を休暇で訪れ、仕事のヒントも合わせて探せるのか、という2つの観点で自分なりの「社会実験」をしてみることにした。

東京湾岸でステイしながらリモートワーク

最初のステイは、新交通ゆりかもめの「市場前駅」から徒歩1分のホテル「ラビスタ東京ベイ」。2022年7月にオープンしたばかりの真新しさで、東京五輪パラリンピックの選手村を対岸に望む、湾岸エリアのホテルだ。

10月下旬の平日午後3時にチェックイン。通常のステイと変わらず、カウンターで予約名を告げるだけだ。カードキーを渡され、13階の部屋に向かった。扉を開けると、ほのかな木の香りが漂い、ホッとした。

ラビスタ東京ベイの室内 窓際にパソコンを並べて仕事

ラビスタ東京ベイの室内 窓際にパソコンを並べて仕事

広いベッドにいったん倒れ込みたいところだが……、オンラインミーティングまであと5分。窓際の机に大急ぎでノートパソコンを2台据え、時間きっかりにミーティングを始めた。

早速、背景がいつもとは違うことに気づいた同僚から「そこはどこですか?」と指摘があった。「今日はホテルからなんですよ」と答えるのが若干、うれしかった。

オフィスでは、マスクを着用して大きな声を出さないよう周囲に配慮しながらになるが、静かなホテルの部屋でマスクなしにリラックスした状態で会話できるのは非常に快適だった。

約1時間のミーティングは無事終了。残りの仕事は、自分の原稿を1本書き、ライターさんからの寄稿原稿を仕上げて、定例のメールマガジンの原稿を書いてと、いずれもやや重めの仕事が盛りだくさん。しかし、この静かな環境であればはかどりそうだ。

オンラインミーティング中の筆者

オンラインミーティング中の筆者

幅の広い机で順調に原稿を書き進め、会社支給のスマートフォン経由でシステムにアクセスしようとしたところ、持参した接続ケーブルが原因とみられるトラブルが発生! 回線がつながったり途切れたりという不安定な状態の中、通常の2倍以上の時間がかかってしまった。これは気持ちを切り替えたほうがよさそうだ。

眼下にレインボーブリッジを望むサウナで「整う」

このホテルを選んだ最大の理由、それは、レインボーブリッジをはじめとした東京湾のパノラマが眼下に広がるという14階の大浴場の存在だ。

まず体を洗い、サウナに直行した。温度は約100度。正面窓からレインボーブリッジが見えた。緑、黄……と色が様々に変わる。汗を流して水風呂に。ガラス扉をあけて露天スペースに移動し、椅子に深く腰掛けた。

東京湾からの海風を浴びながら、羽田空港発着の飛行機が飛び交うのをボーッと眺めた。タワーマンションの明かり、湾岸の倉庫や工場のインダストリアルな光……。浮遊感を感じながら、異世界のような光景を味わう。打たせ湯で脳天に心地よい振動を浴びると、頭の中が空っぽになった。しばらく露天風呂で体を温め、部屋に戻った。

残った仕事をしなければ、と頭の片隅で思いながらも抗しきれず、ベッドに倒れ込み、そのまま朝までぐっすり眠った。

チェックアウトの午前10時まで、昨日の通信トラブルで進まなかった仕事を急いで片付け、30分ほど時間を作れたので、再度、14階の大浴場へ。昨晩とはまたおもむきが異なり、朝の爽やかな空気を胸いっぱい吸い込むことができた。この大浴場は、控えめに言って最高だ。

いったんチェックアウトし、ホテルのテラスで運河を背景に午前中のオンラインミーティングに参加した。サウナからの寝落ちと朝風呂で頭はすっきり。ミーティングでの発言がキレキレだったかどうかは、同僚に聞いてみないと分からないが……。

湾岸の海風をあびながらリモートワーク

湾岸の海風をあびながらリモートワーク

リラックスと集中をほどよく掛け合わせながら仕事をするのに、都心のホテルという選択肢があることを初めて体感した。

TsugiTsugiを利用することで、いくつかホテルをお試しで泊まってみて、自分にフィットする仕事用の定宿を見つけるのもよさそうだ。

週末は気仙沼に息子とGO

さて、次の宿泊は休日。TsugiTsugiで泊まれる全国のホテルの中から、宮城県の三陸海岸にある気仙沼市を選んだ。縁もゆかりもない土地だ。NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」の舞台にもなった港町で、マグロ漁など全国有数の遠洋漁業の拠点として知られる。

気仙沼漁港

気仙沼漁港

TsugiTsugiは同伴者が1人まで無料なので、小学4年生の息子に声をかけてみた。「カキの養殖いかだを見学できるし、サメのミュージアムもあるみたいだけど……」と持ちかけると、生き物が大好きな息子は「行く!」と即答だった。

出発は上野駅から東北新幹線を利用。少し時間があったので、OFFICE PASSで仕事を片付けたいところだったが、今回は息子がいるので見送った。ちなみに、都心部は利用可能なオフィスが豊富なので、新幹線や飛行機などで遠方へ移動する前後によく利用されているようだ。

上野から一ノ関まで行き、在来線に乗り換え、内陸から山を越え、海側の気仙沼まで向かった。列車に揺られること約4時間、ようやく到着した。

まずは「日本で唯一のサメの博物館」をうたうシャークミュージアムに。ふ化前の稚魚が中で動くサメの卵を観察することができ、息子は「これは相当レアだよ」と興奮した様子だった。

体がぷかぷか浮く露天風呂

気仙沼はサメの水揚げが日本一といい、加工会社が集積している。1階の土産物店に高級食材として知られるフカヒレが並んでいた。漁船が停泊する港沿いの道を、今晩宿泊する「気仙沼プラザホテル」に歩いて向かった。静かで空気が澄んでいた。

チェックイン手続きの間、長旅で疲れ気味の息子をホテルの従業員が相手をしてくれたのが助かった。気仙沼で水揚げされたカジキマグロのツノの置物を触らせてくれたりして、温かみのある接客に、一気にリラックスモードに入ることができた。 

気仙沼プラザホテルの客室内

気仙沼プラザホテルの客室内

このホテルの温泉は、海水と同じぐらいの塩分を含んでおり、海水浴のときのように体が浮くため、ぷかぷか温泉と呼ばれているそうだ。試してみると、確かに浮く! 夜の気仙沼湾を眺めながら至福の時間を過ごせた。

今回の旅のメインイベントは、TsugiTsugiのホームページから申し込みできる牡蠣(カキ)養殖の体験会。主催のヤマヨ水産は、NHK朝の連ドラ「おかえりモネ」の実家が営む牡蠣生産者のモデルとして知られる。

養殖用の筏(いかだ)が浮かぶ湾内を望む食堂で新鮮なカキ料理も食べられる。ランチにカキフライとガーリックバター焼きをいただいた。

カキのガーリックバター焼き(ヤマヨ水産の食堂)

カキのガーリックバター焼き(ヤマヨ水産の食堂)

体験会では、船に乗って養殖用のいかだに渡ることができる。案内してくれたのは、4代目社長の小松武さん。大学卒業後にいったん東京で就職した後、家業に戻った小松さんは、カキ漁の繁忙期を迎える中であっても柔和な笑顔で出迎えてくれた。

カキいかだで海と山の関係を学ぶ

救命用具を身に付けて船に乗り込み、いかだに横付け。稚貝のついたホタテを海から引き上げて見せてくれた。1年目のカキは、それとわからないぐらい小さい。

「魚の養殖みたいに、いちいちエサをあげる必要がなくって、つるしておけばいいのでカキ養殖は(仕事としても)おすすめですよ」と小林さんは冗談めかして笑う。海の中の天然のプランクトンがエサになるのだという。

カキの養殖について説明するヤマヨ水産の小林社長(左)

カキの養殖について説明するヤマヨ水産の小林社長(左)

「山と海はつながっている」というのが、おかえりモネの重要なモチーフだった。山の落ち葉などが川をつたって海に流れて栄養となる。こうした環境の中で豊かな生態系が築かれ、人間も食の面などで恩恵を受けている。目の前のいかだで育つカキは、まさにその循環の中にある存在だ。

入り江には周囲の山からの栄養が流れ込む一方、ごみも入り込みやすいので、小林さんらは清掃活動にも余念がない。

船の上で殻をあけたカキ

船の上で殻をあけたカキ

「では、2年目のいかだに行ってみましょうか」(小林さん)。ロープを海から上げると、みたこともない海の生物がびっしりついていた。「あ、これはホヤの仲間ですね。ちょっと指で押してみて」。息子が指で触ると、中からぴゅーっと海水が勢いよく飛び出してきた。叫び声を上げる息子に、「ナイスリアクションだねえ」と船上で笑い声が広がった。

旅先で「副業型プロジェクト」の可能性考える

岸に戻ってあらためて小林さんに話を聞いた。気仙沼のカキの養殖は全国的にも知られているが、それでも後継者不足、人手不足は深刻だという。仕事でビジネスパーソンの副業型プロジェクトも検討している自分としては、関係人口をまずは増やすことが重要なのではないかと考えたのだが……。

まずは、自然も人も魅力的な気仙沼となんらかの関係を築きたいと思い、カキのオーナー制度に申し込んでみた。12月上旬に自宅に新鮮なカキが届いた。

小林社長

小林社長

「お客さまと深くつながりたいんです。顔を思い浮かべることのできるお客さまのおかげで、わたしたちも頑張ろうと思えるんです」という小林さんの言葉を思い出しながら、家族でおいしくいただいた。

東京に戻る新幹線の中で、TsugiTsugiをうまく使えば、「プチ故郷」を全国につくっていくことができるかもしれないと想像した。フレキシブルな旅を通じて、大切な人と体験をシェアしたり、あるいは仕事のヒントを得たりすれば、人生が少し変わるかもしれない。

(桜井陽)

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