②データの集計の仕方がおかしい。英国の運輸省の研究では、立体駐車場を歩くのが怖いと感じる女性が62%だったが、男性は31%だったそうだ。駅のホームで同じく恐怖を感じる女性は60%で、男性は25%だったそうだ。公共交通機関などで暴力の被害にあうことがある女性からすると、当然の数値であろう。ところが、実際に公共空間で犯罪被害にあっているのは男性の方が多いという結果が、公式の統計では出ていたそうだ。これは、女性が自意識過剰で、男性の危機意識が低いことを示しているのであろうか?

そんなことはない。暴力にあった女性は被害を報告しないことが多いためだ。公式統計には女性の被害がちゃんと記録されていなかったのだ。イギリスのノッティンガム警察が、女性への被害を積極的に記録し始めたところ、報告件数が急激に伸びたそうだ。それは加害者が増えたのではなく、まともにとりあってくれる相手がみつかった女性たちが報告し始めたからだ。

きっと会社でも同じようなことが起きているはずだ。犯罪やハラスメントのようなひどいケースまではいかなくとも、例えば自分の数字を調整するために、営業案件を隠している営業担当者多いのではないだろうか?

データの解釈に忍び込む「偏見」

③データがあっても解釈がおかしい。人の判断は偏見に満ちていて、会社では採用の際にもその傾向がでる。「自分が客観的であると思い込んでいる男性ほど、同等の条件がそろった女性より男性を採用する」傾向があるそうだ。

とあるオーケストラはこれに対処するために、採用の際に演奏の音「だけ」を聞くようにしたそうだ。そうすると、女性の割合が10年で0%から10%にまで伸びたそうで、本来大事にすべき基準以外のものに、採用の判断が影響されてしまっていたことがよく表れている。

似たような話は会社の各所に転がっている。例えば、偏った顧客の購買行動を基にした予測を使って、顧客にクーポンを送っていたりしないだろうか?

この2冊でデータの扱いが面倒なことが分かるであろう。さて、あなたが行おうとしている意思決定に関わるデータは、本当に会社にあるのだろうか? あなたはそれを正しく集め、解釈できるであろうか?

丸健一
 2009年、一橋大学公共政策大学院卒、野村総合研究所入社。大手企業社長・役員のメンターとして戦略策定、海外展開支援を手がける。研究者へのコンサルティングスキル移転などエバンジェリスト育成にも注力。自社コンサルティング事業本部の教育担当も2年間務める。慶応義塾大学卒、ロンドンビジネススクールMBA。