その解釈、本当に正しい? データを「読む」力を磨く【新任役員の苦悩】編 (3) 数字の理解がそろわない

トップがきちんと把握しておくべきマネジメントの基本とは何か。目の前の問題解決で実績をあげ、社長に上り詰めたとき、ふと不安がよぎったり自信が持てなくなったりする瞬間が訪れるかもしれない。そんな瞬間はマネジメントの一角を担う役員昇格のときにも訪れる。社長の悩みに寄り添ってきた気鋭のコンサルタントが意思決定のよりどころになる経営書を紹介するシリーズの後半は、そんな新任役員に向けてお届けする。

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「それ、本当?」「普通ってどういうこと?」――社長から聞かれる最も嫌な質問だ。定性的な意見だと議論が前に進まないので、データで根拠を出すようにしてみたが、それでも質問は止まらない。「このデータの定義は何?」「なんでそう判断できるの?」――細かすぎて、無意味とも思える質問にさらされて、毎週の会議の前日はとにかく憂鬱になる。

「データを読む力」はビジネスにおいても不可欠だ。しかし大学の研究のように、丁寧にデータを集めて分析をしていく時間をかけることは、会社においてはなかなか難しい。常に不完全な中での意思決定が求められる。だからこそ、データで読み取れる部分と、そうでない部分を正確に判断し会話をする必要があるが、各人のバックグラウンドがバラバラである会社において、数字理解へのレベルを、全員でそろえることが難しい。

データに踊らされないための基礎教養

データを使う際の注意ポイントを手軽に学べる本が、ダレル・ハフ『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』(高木秀玄訳、講談社ブルーバックス)だ。本書の要点を筆者なりにまとめなおすと、注意点は、

①そもそも、欲しいデータは世の中にあるのか?
②ないなら集めるとして、そのデータの集め方は正しいのか?
③データが集まったとして、分析・解釈の仕方は正しいのか?
『統計でウソをつく法』 ダレル・ハフ著 高木秀玄訳 講談社ブルーバックス

の3つの点だ。それぞれ、簡単に見ていこう。

①そもそも欲しいデータが世の中にあるのか? これは、シンプルでかつ最も難しい問いだ。「自社でもっとアナリティクスを活用したい」と思っている企業の多くは、この段階でつまずくのではないかと筆者は思う。

本書ででてくるのは、米国のエール大学の卒業生の平均給与についての例だ。米国の優秀な大学だけあって、卒業生の給与はとても高いと公表していた。だがこのデータは本当に正しいのだろうか?

そもそもこのデータは卒業生の「自己申告」によって集計されていたそうだ。いったいその申告は正確であろうか? 虚栄心から数字を多く申告する人もいれば、国税からのチェックを警戒して過少に申告する人もいるであろう。そして、なにより、あまり人生がうまくいかなかった卒業生に、連絡はとれないし、そうした人たちが申告してくるとも思いにくい。つまりこのデータは偏っていて、卒業生全体の給与を表していない。データがありそうでないのだ。

写真はイメージ=PIXTA
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データがないと、判断しようがない