手のひらサイズのたんぱく質食品を朝食に追加

たんぱく質の取り方のもう1つのコツとして、藤田教授は「手のひらサイズのたんぱく質食品を1単位として考える」ことを薦める。「筋肉合成を維持するための目安は、1食当たり20グラム以上のたんぱく質を取ること。手のひらに乗るくらいの量の卵、納豆、チーズ、もしくはコップ1杯の牛乳、ヨーグルト、豆乳にはだいたい6~8グラムほどのたんぱく質が含まれるので、3単位を取れば約20グラムになる。日本人の場合、30~64歳では男性は朝食から平均15.2グラム、女性は14.1グラムのたんぱく質しか取れていないので、いつもの朝食に上記の手のひらサイズの食品1品を加える必要がある」(藤田教授)。

米国で肥満の成人男女207人が6カ月間のダイエットを行ったところ、たんぱく質摂取量を食事全体の約18%から約20%に増やすと、緑黄色野菜の摂取量が増加し、精製穀物と砂糖の摂取量が減るなどの改善が表れ、カロリー制限下でも筋肉量の低下が抑制されたとする研究報告があった[8]。「たんぱく質は満腹感も高めるので、余分な間食を減らすこともできる。たんぱく質摂取増を意識すると食事全体の質まで改善され、一石二鳥の効果が得られそうだ」(藤田教授)。

たんぱく質摂取とセットで行いたいのが運動だ。誰もが取り入れやすいのがウオーキングなどの有酸素運動。「我々の研究で高齢者に汗をかく程度の早歩きを45分してもらったところ、翌日の筋たんぱく質合成力が若年者レベルまで改善した[9]。運動効果が翌日まで持続していたことから、1日おきのウオーキングでも効果が期待できる」(藤田教授)。適度な有酸素運動には老化とともに増える酸化ストレスを消去する抗酸化酵素の働きを高める作用も期待できるという。

健康な高齢者男女13人(平均年齢69才)を対照群(休息)と有酸素運動群(45分の単回の有酸素運動)に分け、20時間後にインスリンを下肢に投与し、その刺激による血流の変化と筋たんぱく合成速度を調べた。有酸素運動群は血流、筋たんぱく合成速度ともに有意に改善した(データ:Diabetes. 2007 Jun;56(6):1615-22.)

筋肉を増やすためには軽い筋トレも加えたい。「下半身には大きな筋肉が集まっているので、スクワットや脚を前に踏み出すランジがお薦め。習慣化するには無理なく続けられる回数以上はやらないこと。『スクワットを1日2回』くらいから始めるといい。筋肉量が増えるとボディーラインが引き締まり、姿勢も良くなるので、体の内側だけでなく見た目も若返る」(藤田教授)。

朝昼晩の3食でたんぱく質の目安量を取るのが難しい場合は、こうした運動前あるいは運動後などにプロテイン粉末を取るのもいい。「プロテインは消化吸収スピードが速く、体に素早く取り込まれ、筋肉の合成スイッチを高める」(藤田教授)。

たんぱく質の一種で美容成分としても人気のコラーゲンペプチドでも、肌の弾力を維持したり、膝関節の動きを改善したりといった機能だけでなく、認知機能改善に有効である可能性を指摘する報告がある[10]。目的に応じて、たんぱく質関連サプリを使い分けるのも良さそうだ。

朝のたんぱく質摂取と運動。この2つをセットで習慣化し、たんぱく質の力をスローエイジングに生かしていこう。

(ライター 柳本操)

藤田 聡
立命館大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科教授。米フロリダ州立大学運動科学部運動生理学専攻修士課程修了。米南カリフォルニア大学キネシオロジー学部運動生理学専攻博士課程修了。東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻特任助教などを経て、2012年から現職。運動生理学を専門とし、骨格筋たんぱく質の代謝応答について研究している。

[1]J Clin Endocrinol Metab. 2013 Jun;98(6):2604-12.

[2]Am J Clin Nutr. 2022 Mar 4;115(3):781-789.

[3]J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2014 Oct;69(10):1276-83.

[4]Langenbecks Arch Surg. 2014 Mar;399(3):287-95.

[5]J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2015 Jan;70(1):57-62.

[6]Geriatr Gerontol Int. 2018 May;18(5):723-731.

[7]J Nutr. 2020 Jul 1;150(7):1845-1851.

[8]Obesity (Silver Spring). 2022 Jul;30(7):1411-1419.

[9]Diabetes. 2007 Jun;56(6):1615-22.

[10]Nutrients. 2019 Dec 23;12(1):50.

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