
新型コロナウイルス禍で活動量が減ったという人は、筋肉量も低下している可能性がある。活動量の減少に伴い、食事から取るたんぱく質量も減っていたら要注意。どちらも心身を老化や病気から守る力の低下につながるからだ。
1日のたんぱく質 日本人は男性16グラム・女性7グラム不足
そもそも日本人はたんぱく質が不足しがち。年齢にもよるが、男性は1日当たりの目標量より最大約16グラム、女性は7グラム以上足りないと考えられている※(「令和元年国民健康・栄養調査」「日本人の食事摂取基準2020年版」より)。※「身体活動レベルが普通の人の目標量の下限」と「摂取量の中央値」の差
健康な高齢男女(平均年齢72才)10人を対象に毎日の歩数を普段の3割ほどに減らし、筋肉の減少度合いを見た研究がある。平均歩数を約6000歩から約1400歩に減少させた結果、脚の骨格筋量はわずか2週間で約3.9%減少し、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が約12%悪化。老化に伴って増える炎症物質も増加したという[1]。藤田教授は「運動不足は短期間のうちに筋肉量を減らし、体内の炎症状態を高めてしまう。一般的に活動量が減少すると食事量も減る傾向があり、筋肉の維持に必要なたんぱく質の不足を引き起こすのも問題」と指摘する。
たんぱく質の摂取不足が病気や老化加速のリスクとなることも、近年の研究で明らかになってきた。国立がんセンターが国内約8万人を対象に平均18.4年追跡した調査では、エネルギー摂取量に対するたんぱく質摂取量の割合が低いほど、女性では肺炎による死亡リスクが高かった[2]。
国内の高齢者873人を対象にした4年間の追跡調査では、たんぱく質充足度の指標となる血中アルブミン値が低いと認知機能低下リスクが2.06倍に高まった。さらに、赤血球数量まで少なくなるとリスクは2.62倍まで上がっていた[3]。「たんぱく質は全身の細胞を作る材料。骨格筋はもちろん、免疫機能を支える抗体、酸素をすみずみに運ぶ赤血球などもたんぱく質が不足すると作ることができない」(藤田教授)。
低アルブミン状態が定常化し、筋肉や赤血球のようなたんぱく質をもとに作られる組織・成分量まで減少し始めると、病気から心身を守る力まで低下していくというのだ。
