日経ナショナル ジオグラフィック社

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生すると、凧揚げフェスティバルは中断された。年間600万人の外国人旅行者がほとんどいなくなり、バリ島の経済は破綻した。しかし、旅行者がいなくなったとき、サヨガ氏は即興の凧揚げの美しさを再発見した。凧揚げは本来、お金のかからない外遊びだった。サヨガ氏は2021年、凧揚げの撮影を開始した。

トゥンジュク村の田んぼでベベアン凧をつくるマデ・セマラ・プトラさん(左)とプトゥ・アグス・アディ・セティアワンさん。魚の形をした伝統的なベベアンはバリ島で人気があり、最も揚げやすいとされている(PHOTOGRAPH BY PUTU SAYOGA)
凧を揚げる前に糸を出すマデ・ドゥウィ・サストラワン君(PHOTOGRAPH BY PUTU SAYOGA)
凧揚げの国際大会で審査を行うマデ・スパルタ・モゲ氏(左)とスダナ・コキ氏。凧の舞い方、デザイン、着地などが細かく審査される(PHOTOGRAPH BY PUTU SAYOGA)

お金のかからない外遊び

ある日、サヨガ氏の頭上に色とりどりの凧が舞っていた。小さな脇道に入ると、秘密のフェスティバルが行われていた。海岸で凧揚げしていたら、警察に追い出されたため、目立たない田んぼに移動したのだ。サヨガ氏が「撮影したい」と言うと、顔ではなく凧にレンズを向けるのであればいいと快諾してくれた。

トゥンジュク村からオートバイで魚形のベベアン凧を運ぶアグス・スサンディ・パルタヤナさん(PHOTOGRAPH BY PUTU SAYOGA)

2022年、バリ島の海岸に凧揚げフェスティバルが戻ってきたが、サヨガ氏が撮影したような非公式のフェスティバルも続いている。パンデミック前、混雑したフェスティバルを敬遠していたサヨガ氏にとって、こうした親密な集まりは、子供のころに好きだった娯楽を再発見するきっかけになった。友人や隣人が風を巧みに利用するのを眺めていた夏の日々を。

今では、凧揚げを見に行くとき、わざとカメラを家に置いて出掛けることもある。「先週、ある小さなフェスティバルに行きました。ただ楽しむために」

バリ島のレノンで凧を持つニョマン・パドミ・トリヤンティさん。バリ唯一の女性凧揚げチーム、スリカンディの一員だ(PHOTOGRAPH BY PUTU SAYOGA)
パダン・サンビアン村で兄弟と凧を揚げるワヤン・スナリアシアさん。女性凧揚げチーム、スリカンディの一員だ(PHOTOGRAPH BY PUTU SAYOGA)
COVID-19のパンデミックによる中断を経て復活した2022年のバリ・カイト・フェスティバルで、空に飛び立った凧を眺める観光客。地元住民だけでなく外国人も競技会に参加している(PHOTOGRAPH BY PUTU SAYOGA)

(文 NINA STROCHLIC、写真 PUTU SAYOGA、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年9月7日付]