「ロゴは名前をわざわざ書かずにPFだけ。その方が控えめに表現できます。ダイヤルのギョシェ(彫り模様)は小さく現代的にしました。光の角度によって模様が見えてくる、そんな楽しみ方もできます。スーツを買った時にさわった感触だけでわくわくするような感じです。色は絶妙な色。今着けている『トンダ PF マイクロローター』はグレーに茶色を混ぜた温かみのある色にしました。時分を示すインデックスは外側に配しています。構造的には複雑ですが、目にいろいろなものが飛び込んでこないので、時刻の読み取りを邪魔しません」

滞在5日 「スーツ5着、靴は3足」
――素材やつくりはぜいたくなのに、あまり服装を選ばないイメージですね。
「コロナによってライフスタイルが変わりました。我々は以前、フォーマルなイメージが大変強かったのですが、今はどんな場面でも着けられる時計を作っています。PFもエレガントでありながら、フォーマルになりすぎないライフスタイルに合っていると思いませんか。新作であるこの『トンダ PF GMT ラトラパンテ』はGMT(第二時間帯を示す機能)の驚異的な機構をシンプルに表現しました。時計では調和が大切、そして、何よりも一番大切なのは時刻が分かりやすいということなのです」
――時計の開発でも美観をとても大切にしていらっしゃいますが、ご自身の装いの哲学を教えてください。
「やはり、美観的なところと職人技、この2つで考えます。イタリア人特有なのかもしれませんが、ひとつのブランドで装わず、いくつかをミックスマッチしています。あとは快適性、素材の良さ、仕立ての良さで選びます。スーツであればまず生地を選び、次に仕立屋とともにデザインを決めていきます。洋服はすべてイタリアの生地で、紳士が一番洗練されているナポリかミラノで作っています。ちょっとしたひねりがあるデザインが好きですね。今回、日本には5日間滞在するのでスーツを5着、靴は3足持ってきました。リモート会議でも服装には気をつけています。美しいものを作るには、周りも美しいもので固めること。すべてが絵画を構成する一つの要素であるように考えないとね」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

THE NIKKEI MAGAZINE 4月誕生!
Men's Fashionはこの4月、あらゆるビジネスパーソンに上質なライフスタイルを提案するメディア「THE NIKKEI MAGAZINE」に生まれ変わります。限定イベントなどを提供する会員組織「THE NIKKEI MAGAZINE CLUB」も発足します。先行登録はこちら