
コロナ禍の収束を待たずにラグジュアリーブランドの業績が急回復している。先導役は売れ行き好調な高級時計だ。ロレックスに代表される超有名ブランドは世界中で人気モデルの争奪戦が繰り広げられている。その陰で、じわりと存在感を高めつつあるのが「ニッチブランド」と呼ばれる独立系の高級時計だ。一例がスイスのパルミジャーニ・フルリエで、洗練されたデザインと複雑機構に定評がある。このほど発表した新作は「控えめ」とすら表現できそうな極限のシンプルさが特徴。ラグジュアリーとは「すべてに最高であること」と定義するグイド・テレーニ最高経営責任者(CEO)にとっても納得の一品だ。
――今やパルミジャーニ・フルリエは最も手に入りにくい時計ブランドの一つになりました。かつては知る人ぞ知る存在でしたが、にわかに注目度が高まった理由は何ですか。
「時計業界の潮目が大きく変わったせいでしょう。今も市場の主役は多くの人が欲しがる有名ブランドですが、その一方で最近、ラグジュアリーエリートとでも呼ぶべき先駆的消費者が、よりパーソナル化された、人と違う時計を求めるようになってきたのです。独立系のクリエーティブでニッチなブランドが、そうした欲望を満たしているのです」
――時計業界は金融危機を乗り越え、コロナショックも克服しつつありますが、その間、時計に対する人々の価値観はどう変わりましたか。
「まず言えるのはケース径のダウンサイジングです。かつてはギラギラしたビッグサイズがトレンドでした。しかし2007年からの金融危機で、分厚くケース径が60mmもあるような巨大なダイバーズウオッチの人気が終わりを告げました。60mmは決して快適に着けられるサイズではありません。10年前には42mm、44mm、46mmが主流となり、最近では39mm~40mmが広く支持されています。こうした小径モデルは10年前ならアジア市場でしか売れませんでした」

「待っても自分に合う時計を」という選択
――15年前は装着感よりも、主張があって目立つことが優先されたのですね。
「当時はまだ、消費者は時計づくりに関して乏しい知識しか持っていませんでした。待つのは嫌、いますぐ新しいモデルが欲しい、という意識が強かった。ところが、時計にまつわる知識レベルが上がると、商品選択に目的を持つ人が増えました。自分のライフスタイルにぴったりしたものを注意深く選ぶように変わったのです。4~5年前からは、ウエーティングリストに名を連ねてでもこだわりの時計が欲しい、という方々が目立つようになりました」

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