持ち前の「切り替えの早さ」、両立支える
ママ社長の1日は朝5時半に始まる。起きてすぐ7時までは仕事。その後、朝食や子どもの身支度を済ませ、幼稚園に送っていく。保育園でないのは意外だが、新型コロナウイルス禍でテレワークがメインとなり、品川のマンションから神奈川県小田原市に引っ越したところ、なんと同市で待機児童となってしまった。慌てて預け先を探した結果、午後6時まで預かり保育をしてくれる幼稚園が見つかったのだという。息子を送って自宅に戻り9時から再び仕事に集中。特別なことがない限り、午後5時には仕事を切り上げて子どもを迎えに行き、夕食、家事。ほぼ毎日、酒のさかなも作ってワインや日本酒を楽しむという。就寝は夜10時。
世のワーキングマザーの中には、時間に追われてつい「早く早く」と子どもを急かしたり、子どもと一緒の時も仕事のことが気になってメールしてしまったりして、自己嫌悪になる人も少なくないが、荒川氏の場合、「夕方5時以降は一切仕事のことは考えない」のだとか。ここでも、持ち前の「切り替えの早さ」が功を奏しているという。ただ、夫に対しては「イライラすることがしょっちゅう」とこぼす。
「2人ともテレワークで1日中同じ家にいるのに、なぜか彼は時間を気にせず自由に仕事をしているんですよ。限られた時間の中で、なぜ私ばかりが掃除をし、買い出しをし、ご飯を作って食器を洗っているのか。なぜあなたは洗濯機しか回さないのか、というのはよく言っています。でもまあ夫も私がすごく忙しい時は家事もやってくれますし、私の立場も理解してくれていますので、これからも話し合いながら、お互いの状況に合わせて家事育児の分担の最適解を見いだしていきたいと思っています」
2年目に過去最高益
社長就任から2年。GPTWジャパンは非上場で決算数字は非公開だが、コロナの影響も大きかった21年3月末は減収増益。22年3月末は売り上げ、利益も過去最高を記録し、増収増益を達成したという。

「戦略を立て、それを実行できる組織を作るために人材を育成し、すべてのアクションの結果がダイレクトに返ってくるというのが社長。プレッシャーもありますが、自ら手を挙げてその立場となり、結果も数字に表れてきて、社会人人生の中で今が最高に楽しいです」
今目指しているのはGPTWをより多くの経営者に知ってもらい、「従業員のエンゲージメント高めるためには、GPTWに調査してもらうのが当たり前」という認識を広めることだという。ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)の流れの中、組織の多様性や人材投資への関心が、これまでになく高まっていることは追い風だ。ただ、エンゲージメント調査は競合も多い。
「3〜5年以内には頭ひとつ抜け出して、業界トップのポジションをとりたい」
よく似合うグレーのスーツの中で背筋を伸ばし、キリリとした表情でそう言い切った。
(ライター 石臥薫子)