
新型コロナウイルス禍も足かけ3年、ワクチン接種率も高まり、企業の接待や宴会も少しずつ増えてきた。そんな中、連日会食でにぎわう店がある。東京・日本橋、地下鉄の駅から直結しているビルに入る「和食日和 おさけと 日本橋」だ。「今年の6月くらいからでしょうか。6人くらいのグループの予約がいきなり入ってきました。水曜と木曜の夜は接待、金曜の夜はお仲間同士の会食でほぼ埋まっています。昼も、6~7割が会社関係のランチ接待です」と酒管理部部長の鮫島菜々子さんが教えてくれた。
この店が接待や会食で人気がある理由はいくつかあるが、一つは「日本酒」である。何しろ、酒の品ぞろえがすごい。日本酒を常時50種以上用意し、グラス1杯680円からと利用しやすい価格で提供している。それも、「新政」「勝駒」「黒龍」「村祐」「醸し人九平次」「而今」「羽根屋」などの人気の希少銘柄から、小規模酒蔵のこだわり抜いた銘酒まで、ずらりとそろっている。和へのこだわりから、焼酎や泡盛はあるが、ワインなどはない。日本酒好きにはたまらないだろう。

一般に接待の場合は、料理や酒の選定は店に任せることが多い。コース料理に飲み放題といった具合だが、接待ではホストには選定に余裕がないため、酒の種類も限られてくる。ところがこの店は逆に、豊富にそろえている日本酒の魅力を接待の成功につなげている。接待先が日本酒の愛好家という情報を事前に得ていれば喜んでもらえるし、ホスト側が日本酒愛好家であれば、「このお酒が飲めるお店はなかなかないんですよ」と話題を作り、盛り上げることができる。「新規のお客様から接待のご予約をいただいたとき『以前この店で接待を受けてとてもよかったから』と言われることがありますが、飲食業冥利に尽きます」と鮫島さんが話してくれた。
「和食日和 おさけと」は、もともとコメ作りに興味があり、奥様もコメどころの新潟県出身というオーナーの山口直樹さんが、酒米にまでこだわる日本酒の専門家として2018年1月、東京・日本橋(現在の日本橋店とは別の場所)にオープンさせたのが始まり。以来、お茶の水、神保町と出店を重ね、2022年11月16日に東京・霞ケ関に7店目をオープンした。こちらも、地下鉄虎ノ門駅に直結し、ビジネス街に近い、接待・会食にふさわしい立地だ。
