「らぁめん ご恩」は今年3月、東京都中野区内にオープンした

麺は、1932年に東京・池袋の地に創業した老舗『松本製麺所』のもの。「以前、ある店のラーメンを頂いたときに、『自分が提供するラーメンにも使いたい』と、強く心引かれたのが、この『松本製麺所』の麺でして。製麺所を探し出して直談判しました。まさに、理想の麺でしたから」

このスープにしてこの麺ありの傑作

ストレート麺で、淡麗スープに合わせる麺としてはやや太めである点が、大きな特徴。ツルンと滑らかな触感と、ザクリと歯切れの良いかみ心地とが、高い次元で共存。スープの持ち味をいささかも損なわない柔軟性を保ちながら、麺自体にもりんとした存在感が漂う。まさに「このスープにしてこの麺あり」の傑作といっていい。

「『ご恩』という屋号は、これまでお世話になった方々やお客様に、精魂を込めた1杯を提供していくことで、恩返しをしていきたい、という意味を込めました。これからも、初心を忘れずに、一人ひとりのお客様に真心を尽くした1杯を提供していきたい」と謙虚に語る店主。

テーブル席が用意され、カウンターの席間距離もゆったり。店主ご夫婦の接客も実にきめ細やかで、ラーメン店にありがちな慌ただしさとは無縁な雰囲気は、お子様連れのファミリー客にもピッタリだろう。まさに、次世代を担う淡麗系の新鋭と呼ぶにふさわしい優良店。未訪の方はぜひ、万難を排して足を運んでもらいたい。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。