「好き」軸に発達障害の子を支援 元サイバーの起業家Woody社長 中里祐次氏(上)

「Branch(ブランチ)」は、発達障害や不登校の子どもたちが自分の「好きなもの」を突き詰めることで自信を持ち、社会とうまく関わりあえるよう支援するサービスだ。2017年にスタートして以来、自己肯定感を持てず自傷行為に走るほど追い詰められた子どもやその家族のよりどころとなってきた。Branchを運営するWoody(東京・渋谷)社長の中里祐次氏(39)はサイバーエージェント出身の起業家。なぜ発達障害の課題に取り組むことになったのか。

15人に1人が発達障害?

生まれつき脳の機能の発達がアンバランスなために、得意なことと苦手なことの凹凸が激しく、社会生活に困難を抱えることが多い「発達障害」。小中学生の15人に1人にその可能性があると言われ(2012年、文部科学省調査)、その数は06年から19年までの13年で10倍近く増えているというデータもある(19年、同)。

人の気持ちを理解・想像するのが苦手な「自閉スペクトラム症」(ASD)の子どもは、自分の興味のあることを一方的に話したり、特定の手順やルールにこだわったりする傾向が強く、対人関係をうまく築けないケースが多い。

「注意欠如・多動症」(ADHD)の場合は、忘れ物や衝動的な行動が多く見られ、集団生活の中で問題児扱いされがちだ。読み書きや計算など特定の分野の学習に極端な困難を抱える「学習障害」(LD)の当事者も「怠けている」「努力が足りない」と見なされてしまうケースが少なくない。

「Branchに来るのはその中でも、かなり追い詰められ、心がズタボロ状態の子どもたちとその保護者です」

運営者の中里祐次氏はそう話す。

発達障害で深刻なのは、目に見えない障害であるがゆえに周りから理解してもらえず、叱られたりいじめられたり、社会に「適応」するように強いられたりすることで自己肯定感が低下。発達の特性そのものによる生活上の支障(1次障害)だけでなく、対人恐怖やうつといった「2次障害」を引き起こすリスクが高い点だ。

Woody社長 中里祐次氏

「実際、Branchにたどり着く子どもの半数近くに、自傷行為が見られます。自分の頭やお尻を激しくたたいたり、髪をかきむしったりする行動です。小学校低学年でも『自分はダメだ』『死にたい』と毎日つぶやいているようなお子さんもいます。そのため不登校になっているケースも非常に多い。保護者もすごく悩んでいて、相談できる人がいない、どうやって子どもの得意なことを伸ばせばいいのかわからない、先の見通しが立たずに不安、といった声を多く聞きます」

17年に中里氏が立ち上げたBranchは、発達障害や不登校の子どもたちが自分の「好きなこと」を見つけ、それを突き詰めることで自信を持ち、社会とうまく関わりあえるよう支援するサービスだ。

好きなこと、得意なことを磨いて子どもの可能性を広げてやりたい――。障害の有無にかかわらず、多くの保護者はそう願う。しかし「発達障害を抱える子どもにとって、それは簡単ではない」と中里氏は言う。

次のページ
1対1で向き合う