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日経 X woman

書籍『なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか』(小早川優子著、日経BP)で取り扱ったテーマを、さらに深掘りする連載です。書籍の感想をメールで送ってくれた、あるメーカーの男性管理職Aさんと小早川さんの対話を、3回に分けて紹介します。今回は下編です。

◇   ◇   ◇

日経xwoman編集部(以下、――) 日本の管理職や管理職一歩手前の人が取るべき行動は、小早川さんは何だと思いますか? 前回のお話(「パワハラ指摘恐れて仕事抱え込み 現場リーダーの悩み」)にあったように勉強するのがよいのでしょうか?

小早川さん 勉強したほうがいいです。でも、ほとんどの人たちは勉強しないでしょう。

Aさん 小早川さんのお話を聞いて、勉強にヒントがあるのだろうと思いました。企業がリスキリングを推奨するなどして、例えば何人の社員を社会人留学させているといった情報を各企業が公表し、競争し合うようになるといいのかもしれません。

小早川さん そうですね。そこには、おそらく2つの大事な方向性があると思っています。前回記事で、日本の軍隊において兵隊たちが大変優秀だと評価されていたと言いましたが、それと同じように今の日本国民も多くの人はとても優秀です。そこに少しでも教育を乗せたらグッと伸びるはずです。ですから、リスキリングや管理職研修が企業内で浸透するようになったら、社会が大きく変わる可能性はあると思います。

その一方で、日本の社会は安定性が高く、変化を嫌う傾向があります。これを考慮すると、古い考え方がなくならない限り、社会は大きくは変わらないともいえます。

先進的な企業は、社内に「〇〇大学」というものをつくっていますよね。ソフトバンクやマクドナルド、あと、ラーメン店「一風堂」を運営する力の源ホールディングス(福岡市)も社員研修に費用を掛ける企業として有名です。グローバル化する企業と、ローカルにおける成長を追求する企業に分かれると思いますが、前者でいうと、日立製作所は研修を充実させる方向に行っています。

社内研修の充実で高まるのは、エンゲージメント? 離職率?

――社内研修の重要性が高まる一方で、社内研修を充実させたら、市場価値も高まって社員に転職されてしまうという見方もあると思います。

小早川さん 日本企業の経営者は、皆さんそうおっしゃいます。私たちが実施する研修プランの「育休プチMBA」も、導入することに対する社内の抵抗勢力がまず口にするのは「育休中に勉強させたら会社を辞められてしまうのではないか」というフレーズです。

日本社会全体を見ても「離職率が高いのは悪」というイメージが強くありますよね。昔の人はもといた組織を辞めるというのは「逃げる」ことだと思っているきらいがあります。そういう人の考え方を変えることは難しいので、「うちの会社を辞めて転職する人がいるということは、外からうちに転職してくる人もいるということですよね」などと交わすしかありません。

Aさん 社員にスキルを積む機会を与えても転職していかないように、会社としてのエンゲージメント(組織との心のつながり)を高める必要があるのですね。

社員研修により、若手社員のエンゲージメントは高まる。シニア層の感覚とはギャップがある(写真はイメージ=PIXTA)

社員研修により、若手社員のエンゲージメントは高まる。シニア層の感覚とはギャップがある(写真はイメージ=PIXTA)

小早川さん その通りです。若手社員には、会社から研修が提供されることによって、会社に対するエンゲージメントが上がる傾向があります。でも、50代以上の社員は自分にそういう経験がないからなのか、その心理をあまり理解できないようです。「研修を充実させることが、なぜ社員の会社に対するコミットメント向上につながるのか?」と疑問視する方が多いように思います。

Aさん その考え方の違いは、世代の問題なのでしょうか。社内の上の世代にそういった話をしても、話が通じているような気がしません。

小早川さん 若手のほうが「会社が自分に期待してくれているなら、仕事で恩を返したい」という気持ちが強いような気がします。世代の差なのか、環境の差なのかは分かりません。上の世代は、誰に期待されようがされまいが「やるぞ!」となる傾向があります。モチベーションの源泉が違うのかもしれません。

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