飲酒とは無関係の脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患;NAFLD)がある人は、心不全を新たに発症するリスクが上昇していることが、複数の研究データを統合した分析[注1]によって示されました。
脂肪肝の健康被害は肝臓のみにとどまらない
肝臓に脂肪が蓄積する脂肪肝は、自覚症状がほとんどないため、健康診断や人間ドックなどで指摘されても放置している人が少なくありません。脂肪肝は、飲酒が関係するアルコール性脂肪肝と、飲酒とは無関係の脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患;NAFLD)のどちらかに分類されます。NAFLDは、慢性肝疾患のなかで最も患者数が多い病気の1つで、世界の成人の最大で30%がNAFLDを持っていると推定されており、患者数は増加し続けています。
NAFLD患者には、肝臓に関係する合併症、例えば、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)や肝硬変、肝臓がんなどが生じる可能性がありますが、健康被害は肝臓にとどまらず、心臓や血管系などを含む他の臓器にも及ぶことを示す強力なエビデンスがあります。
近年、複数の研究が、NAFLD患者では、そうでない人々に比べ、心不全発症リスクが高いことを示していました。しかし、それらの研究の規模は小さく、また、NAFLDの重症度によってリスクの大きさが異なるかどうかは示されていませんでした。そこで、イタリアなどの研究者たちは、これまでに行われた観察研究を対象とするメタ分析を行い、NAFLD患者の長期的な心不全発症リスクについて検討しました。
メタ分析は、これまでに発表されている研究の中から、知りたい情報(例えば今回の場合は、NAFLD患者における長期的な心不全発症リスク)について報告していた研究を選び、それらが提示していたデータを統合して分析するもので、より質の高いエビデンスが得られます。
[注1]Mantovani A, et al. Gut. 2022 Jul 25;gutjnl-2022-327672.
