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「1票の格差」2倍超の衆院 東京一極集中で改善に限界

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NIKKEI STYLE

政権を選ぶ衆院総選挙が4年ぶりに行われます。衆院選のたびに問題になるのが、選挙区ごとの人口の違いによって投票価値の平等が損なわれる「1票の格差」です。司法は最大格差が2倍未満になるよう政治に対応を促してきました。

今回の衆院選は小選挙区比例代表並立制で初めて行われてから四半世紀の節目です。この間、1票の格差は1.98倍から2.47倍で推移してきました。2倍未満になったのは2017年の選挙だけです。

1月時点でみると、人口が最多の東京22区は最少の鳥取1区の2.047倍でした。新型コロナウイルス流行前の20年1月時点の2.016倍から格差は拡大、2倍以上の選挙区も6から15に増えました。

これは人口の東京一極集中が続いているためです。コロナ下で東京圏の流入は鈍っていますが、転入超過に変わりはありません。現在、2倍未満に収まるよう20年の国勢調査をもとに都道府県に配分する定数や区割りを見直しています。

試算では定数を首都圏9増、愛知1増とし、地方10県を1減とする「10増10減」が必要とされます。格差は1.695倍になりますが、地方の大幅な定数削減は政治的に難題です。

今後も東京一極集中が続けば都市と地方の人口格差がさらに広がり、都道府県単位で配分するのは難しくなります。四半世紀の節目は選挙制度を見つめ直すよい機会かもしれません。

視点を変えてみましょう。世界160カ国で下院の1票の格差を比較した慶応大学の粕谷祐子教授は「衆院の1票の格差は世界的にみると平均よりもやや小さい」と指摘しています。

選挙区の人口と定数が全体に占める割合を比べ、その開きから格差を導く指標で比較しました。値が大きいほど格差は大きく、世界平均は8.6、衆院は5.1でした。米国は1.3とかなり平等ですが、区割りが政治的思惑に左右されやすい問題があります。

この指標で格差が大きくなるのは、野党はあるものの、自由主義国ほど権力監視の機能が強くない権威主義国です。為政者が政治勢力を維持するため区割りを都合よく操作しがちだからです。1票の格差は民主主義の成熟度も映します。

選挙制度では政治家が何を代表するかという代表理念も重要です。粕谷教授は①地域の居住者の代表②政党支持層の代表③全国民の代表④行政区域の代表――の4タイプを挙げます。

衆院は小選挙区が①、比例代表は②、参院は選挙区が①、比例代表が②と③を体現しています。④は人口に関係なく各州2人の米上院のような地域代表ですが、日本にはありません。

粕谷教授は「衆院は①と②、参院は③と④の代表理念を目指し、すみ分けを明確にするのも改革方針のひとつだ」とします。多様な代表理念を実現するための検討課題といえそうです。

粕谷祐子・慶応大学教授「制度設計の変更も必要に」

「1票の格差」問題をどう考えたらよいか。比較政治学が専門で各国の選挙制度や1票の格差に詳しい慶応大学の粕谷祐子教授に聞きました。

――世界的にみて1票の格差はどの程度ありますか。

「議会選挙における1票の格差は、世界のほとんどの国で避けて通れない問題です。例外はイスラエルのように全国を1つの選挙区とする選挙制度を採用する国ですが、そのような国はかなり珍しいです。世界の主な地域別に見ると、アフリカ諸国とラテンアメリカ諸国で1票の格差が大きくなっています」

「1票の格差の国際比較によく使う指標に『ルーズモア・ハーンビー指標』があります。各選挙区の人口と議席数がそれぞれ全国に占める比率を比べ、その乖離(かいり)を集計したものです。例えばある選挙区の人口が全国人口の3%で、定数も総定数の3%なら、その選挙区の乖離はゼロです。全選挙区について集計した全体の値が高くなるほど1票の格差が大きいことを意味します。これを使うことで選挙制度が異なる国の間でも国際比較が可能になります」

「私が以前に行った共同研究で160カ国における下院(一院制の場合は単に国会)の1票の格差を計算してデータベースを作成しました。下院レベルで1票の格差がかなり小さい国は、米国の1.4(2010年選挙)、オーストラリアの2.5(12年)などがあります。これよりやや高いのが英国の4.2(15年)で、日本の衆院は小選挙区と比例代表を総合した値では5.1(14年)でした。このデータベースでは平均が8.6、中央値が6.6です。大ざっぱにいえば、衆院の1票の格差は世界的にみると平均よりもやや小さいことになります。ちなみに最大はハイチの40.1(15年)です」

「日本を歴史的にみると、中選挙区制時代のルーズモア・ハーンビー指標は10以上のことがほとんどでした。例えば中選挙区制での最後の衆院選となった93年選挙では17.8で、国際的にみてもかなりゆがんだ区割りでした。中選挙区制時代のゆがみは①各都道府県への議席配分②各都道府県内での選挙区境界の線引き――という2つのレベルで生じていました。現在は、主に各都道府県への議席配分のレベルで問題が起こっており、都道府県内での選挙区境界の線引きの段階では格差はかなり小さく抑えられています。小選挙区比例代表並立制の時代になり、かなり改善してきている状況です」

「上院に関しては、下院データベースほど網羅的ではありませんが、29カ国を対象とした場合の世界平均が18.6で、参院(07年)は9.7と、こちらも低い部類に入ります。ただ、9.7は比例代表と選挙区を合わせた数値で、選挙区のみでは16.1と平均に近くなります」

――1票の格差が大きい国と小さい国にはそれぞれどんな傾向がありますか。

「1票の格差に影響を与える要因として選挙制度は重要なもののひとつです。一般的な傾向として、小選挙区制の方が比例代表制より格差が大きくなりがちです。小選挙区制は個々の選挙区を細かく区切る必要があり、1つの選挙区に複数の議席を配分できる比例代表より人口比に応じた区割りが難しくなりやすいためです」

「小選挙区制でも1票の格差が非常に小さい国もあります。米国の下院がその一例で、この場合、司法府による抑止効果が働いています。米下院は60年代までルーズモア・ハーンビー指標が8程度と高めでしたが、60年代から80年代にかけて最高裁判決がいくつかの州で起こっていた投票価値のゆがみを違憲としたため、全国的に是正が進みました。選挙制度に加え、政治から独立した司法の存在も、1票の格差に影響を与える要因として重要です」

「上院の場合、連邦制を採用する国で1票の格差が大きくなる傾向があります。例えば米国36.4(92年)、アルゼンチン48.5(95年)、ブラジル40.3(98年)などです。州などの行政単位で選挙区を設定することが多く、区割りの基準が人口比にならないためです」

――政治体制や民主主義の成熟度によっても違いますか。

「政治体制がどの程度民主主義的か、という点も関係します。区割りの操作は、政府与党にとって勢力維持のためのツールであることがよくあります。このため、司法だけでなく、議会、メディア、市民団体など、政府に対するチェック・アンド・バランスが機能していない場合、つまり民主主義のレベルが低い体制の場合には、1票の格差は大きくなりやすい傾向があります」

「極端に政治的自由がないタイプの独裁では、そもそも野党が勢力を持たないので選挙操作のインセンティブが低く、1票の格差は大きくなりにくいです。それに対し、ある程度は競合的な選挙が存在するものの、西欧先進国ほどには政府抑制のメカニズムが発達していない『競合的権威主義体制』において1票の格差が最も大きくなる傾向がみられます。これは先ほどの160カ国のデータベースを使った研究から得られた知見です」

――日本での1票の格差をめぐる議論には、どのような特徴や課題がありますか。

「60年代初頭に越山康弁護士が初めてこの問題の訴訟を起こして以来、一貫して、法律家を中心とした市民団体がその中心にいます。『法の下の平等』を求めて市民団体が裁判所に訴え、裁判所が何らかの判断を下し、それに対して政治家が対応するという構図です」

「裁判官が違憲、合憲などの判断をする際の基準になっているのが、人口が最大の選挙区と最少の選挙区の比較です。これが何倍だと問題なのかが訴訟の争点となってきました。その結果、何百とある選挙区のうちの上限と下限のみを気にして、その間にある残りの選挙区、つまり全体像を見ないまま議論が進んでいます」

「このような議論の仕方では、抜本的な改善は難しいと思います。過去の区割り修正では、最大・最少比は改善されても、全ての選挙区を勘案すると1票の格差はかえって微増していた場合もありました。最大・最少比が何倍以上だとレッドカードで、それ以下は許容範囲、というような日本での議論の仕方は、最高裁判例が作っている慣例だと理解していますが、投票価値の平等という原理原則を考える場合には的を射ていないように思います」

――20年の国勢調査をもとに衆院小選挙区の区割りを10増10減とする見直し案をどのように評価しますか。

「ルーズモア・ハーンビー指標を使って、今回の見直し案の1票の格差を計算したところ、3.6でした。各都道府県内での選挙区人口は定数を都道府県レベルの人口で単純に割ったものを使用しています。同じ国勢調査結果を用いて、現行の定数配分の設定で計算した場合は6.5だったので、良い方向への変化だと思います」

「しかし、3.6という数字を『コップには水が半分も入っている』とみるか、『半分しか入っていない』とみるかは、解釈が分かれるのではないでしょうか。もし米下院並みに低い指標を狙うなら、都道府県を単位とした配分の計算式そのものを再考する必要があるかもしれません。都市への人口集中が進めば都道府県の間の人口格差は広がります。今後も都市への人口集中が進むとすれば、都道府県を配分先の単位とした現在の計算式を使っている限り、これ以上の改善は難しいと思います」

「抜本的に改善するなら、いくつかの県を合わせてブロック化した地域単位をもとにした計算方式にすることも将来的に必要になるかもしれません。あるいは、比例代表選出議員を減らすか衆院総定数を増やして小選挙区議員の数を増やす、という方向での対応も考えられます」

――1票の格差問題はほかにどのような論点がありますか。

「議席の配分と選挙区境界線の策定というテクニカルな問題として語られがちですが、その前に、政治家はどのように有権者を代表できるのか、という民主主義における代表理念の問題としての議論を重ねることが重要だと思います。それにあたっては、どのような代表理念を体現する選挙制度を採用するか、そして、日本のような二院制の場合には、両院の選挙制度の間で代表の理念をどう組み合わせるか、の2つが主な論点になります」

「選挙制度の代表理念には①政治家がある特定の選挙区に居住する有権者を代表する場合②所属政党を支持する有権者を代表する場合③全ての有権者を代表する場合――があります。制度の典型例としては①は小選挙区制、②は拘束名簿式比例代表制、③は大統領選挙です。さらに上院での制度設計でよくみられるものとして、米国のように④人口規模に関係なく、州などの行政単位で区切った領域(地域)を代表する場合が加わります」

「これらの代表理念の4タイプから日本の制度設計を考えると、衆院選は小選挙区が①を、地域ブロックごとの拘束名簿式比例代表は①と②の両方を体現しています。参院選は県を単位とする選挙区選挙が①、全国1区の非拘束名簿式比例代表制が②と③の代表理念を体現しています。単純化した見方ですが、④の代表理念が日本での制度設計には組み込まれていないことがわかります」

「個人的な意見ですが、衆院は①と②、参院は③と④の代表理念を目指すようすみ分けを明確にするのは改革方針のひとつだと思います。現状では①が両院で重複していますし、④の代表理念は体現されていません。このような制度設計にするためには、例えば参院を都道府県代表の院と位置付けるなど、憲法を修正する必要が出てきます」

「現行憲法の条文のもとで制度改革を考えるとしたら、衆院は基本的に変更せず、参院で非拘束名簿式比例代表をなくし、県単位または地域ブロック単位の選挙区選挙だけにすることを提案します。これにより、1票の格差をある程度小さく抑えたうえで、地域を代表するという理念を加えられます。この場合、全国民の代表という③の理念が欠けますが、これは参院選で比例代表選挙に議席を配分していては司法が要求する程度の1票の格差抑制が可能にならないためで、④を優先させる考え方をとっています」

(編集委員 斉藤徹弥)

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