40代からの準備が明暗を分ける

「54歳からの初めての転職活動は、試行錯誤の連続などという言葉で言い表せるような『きれいごと』ではありませんでした。それでも、大きな壁となる『年齢フィルター』を突破して、面接までたどり着いたのは、2年間で計7社ありました。選考過程でも多くの理不尽に見舞われましたが、7社目で奇跡が起こりました。それが、現在勤務している会社との出合いでした」

「2年間にわたる暗闇の中での闘いは、つらく厳しいものでしたが、それを補って余りあるものをもたらしてくれました。自分は何者か。自分は何をしてきたのか。自分は何ができるのか。それを生かして、これから起こることに対して、何をしていけるのか。これらのことを徹底的に見直す機会を与えてくれたのです」

「現職については現在進行形のビジネスであるために詳細を話せませんが、私が今担当しているのは、製品・サービスをつくり上げるバリューチェーンを構成する、異なる業界の企業同士の連携プロジェクトを紡いでいく仕事です。商社やメーカーなど、業界の垣根を越えて、デジタル時代の最先端ビジネスを生み出すサポート役をしています」

「不思議なことに、現在の仕事の中にも過去の仕事で培った人脈や知識が大いに生かされています。まさに『奇跡』という言葉がふさわしいほどに幸運だったと思っています」

こんな過酷な転職経験を乗り越えて、現在はやりがいを持って働けているAさんから、これから人生後半キャリアを考えることになる40代に伝えたいメッセージとはどんなものか。率直な気持ちを語ってもらいました。

「動きたい、だけど動けない。動かなければならない、でも、ちゅうちょしてしまう。そんなジレンマを持っている人が多いのではないかと思います。特に大企業で働いている40代だと、現職の忙しさややりがいもまだまだ強いでしょうし、家族の生活を考えるとリスクが取りにくいと考えるのも当然だと思います」

「でも、そんな皆さんにこれだけはお伝えしておきたい。少なくとも70歳ぐらいまで働いていくことを考えるなら、40代から準備を始めることが極めて大切です。ただ、準備と言ってもそんなに大したことでなくても構いません。自分より10歳上、15歳上の上司や先輩世代の人たちがどう動いているかを、しっかり見聞きしておくだけでも対策にはなります。先輩たちの行動や心理をじかに見聞きする量を蓄えておくだけでも、いざとなったとき、誰に相談すべきかがわかるはずです」

「そして、最後にもう1つお伝えしたいことは、信じて、信じて、ひたすら信じて行動し続けていれば、思いがけない形で、人の縁はやってくるのだということです。これは万人に共通することではないことかもしれません。でも、少なくとも私はそのようにしてもたらされた人の縁によって、私に新たな活動の場が与えられました。ぜひ今の同僚や取引先、友人、後輩など、1人でも多くの関係者とのご縁を大切に育てておいてほしいと思います。もし想定外の未来がやってきたとしても耐えられるよう、皆さんそれぞれのやり方で備えをしておくことをおすすめします」

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

黒田真行
 ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

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