第1作から続くファミリービジネス
シリーズの大きな見どころであるアクションや新兵器も、新作では盛りだくさんだ。自分の足を縄でしばって橋の上からダイブ、長い階段を駆け上がるバイクチェイス、小型ポッドのような機体が飛行機の格納庫から急発進し、空中へと真っ逆さまに落下し、両翼を広げ小型飛行機へと早変わり。ボンドが乗るアストン・マーティンが多くの敵に包囲されて銃撃を受けるが、ヘッドライトからマシンガンが飛び出して、車を360度回転させながら発砲する。
監督・共同脚本を務めるのはキャリー・ジョージ・フクナガ。テレビシリーズ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』でシーズン1全8話を監督し、エミー賞のドラマシリーズ部門監督賞を受賞。アフリカの内戦を題材にした『ビースト・オブ・ノー・ネーション』の脚本・監督を手がけ、大ヒットホラー映画『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』に脚本家の1人として参加している。様々なジャンルの作品を手がけてきた演出力、脚本家としてのストーリーテリング力が評価されての起用だろう。
主題歌には旬のアーティストを起用するのも007の定番だ。前々作『スカイフォール』ではアデル、前作『スペクター』ではサム・スミス、そして今回はビリー・アイリッシュが起用された。本作の主題歌は一足早く今年のグラミー賞で最優秀楽曲賞(映画、テレビ、その他映像部門)を受賞している。
プロデューサーはバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソン。バーバラ・ブロッコリは、1作目~16作目までプロデュースしたアルバート・R・ブロッコリの娘で、17作目からプロデュース。マイケル・G・ウィルソンはアルバートが義父にあたり、11作目からプロデュースしている。007はブロッコリ一族が約60年間製作にあたっており、いわば「ファミリービジネス」。共同製作・配給にあたるメジャースタジオは代わってきたものの、プロデューサーはブロッコリ一族という珍しいシリーズ映画なのだ。
ちなみに、米国内の配給はMGM、米国外の配給はユニバーサル・ピクチャーズ(日本では東宝東和)。ユニバーサルが007を配給するのは初めてだ。

(ライター 相良智弘)