
1401人の初回調査時点の昼寝時間は1日あたり46.60分で、昼寝の頻度は1日あたり1.80回でした(いずれも中央値)。
1401人のうち、活動量計を用いた評価を2回以上受けていた1065人が、最長14年間にわたる昼寝習慣の変化とアルツハイマー病の関係の評価対象になりました。うち812人(75.7%)は、初回評価時点で認知機能は正常でしたが、追跡期間中に384人が軽度認知障害を発症し、146人がアルツハイマー病と診断されました。また、209人(19.5%)は初回評価時点から軽度認知障害であり、それらのうちの101人が、追跡期間中にアルツハイマー病を発症しました。残る44人(4.1%)は、初回評価時点で既にアルツハイマー病と診断されていました。
初回評価時点で認知機能が正常だった812人を追跡したところ、認知機能が正常に維持されていた期間中も、昼寝時間は、1年あたり平均11.31分/日ずつ有意に延びていました。軽度認知障害と診断された後の延びは1年あたり24.66分/日と、2倍以上になっており、アルツハイマー病診断後は1年あたり68.35分/日ずつ延長していました。これは、認知機能が正常な人の加齢による昼寝時間延長幅の6倍を超えています。
昼寝の頻度についても結果は同様で、認知機能が正常な人の1年あたりの増加は平均0.35回/日で、軽度認知障害になると0.67回/日になり、アルツハイマー病診断後は1.25回/日の増加を示していました。認知機能が正常な人と比較すると、すべて差は統計学的に有意でした。
初回に昼寝時間が長かった人はアルツハイマー病リスクが上昇
続いて、初回の評価以降受診しなかった115人と、初回評価時点でアルツハイマー病だった83人を除外し、残る1203人を対象に初回評価時点の昼寝習慣とその後のアルツハイマー病発症の関係を分析しました。このうち290人が、初回の評価から最短で1年以内、最長では15年後までに(平均6.0年)、アルツハイマー病を発症していました。
初回評価時点の昼寝時間が長いことは、アルツハイマー病発症リスクが高いことと関係していました。昼寝時間が対象集団の1SD(標準偏差)分長かった人のその後のアルツハイマー病発症リスクは1.20倍でした。具体的には、1日に1時間以上昼寝をする人のアルツハイマー病発症リスクは、昼寝時間が1時間未満の人の1.4倍でした。また、昼寝時間が1SD分長い人のアルツハイマー病発症リスクを初回評価時点の年齢差で表すと、1.6歳分になりました。
初回評価時点の昼寝の頻度も、アルツハイマー病発症リスクと同様の関係を示しました。頻度が1SD分上昇あたりのアルツハイマー病発症リスクは1.23倍で、これを年齢差にすると、初回評価時点で1.9歳年上だった人と同じレベルになりました。1日あたりの昼寝の頻度が1回以上だった人のアルツハイマー病発症リスクは、1回未満だった人に比べ約40%高かったことが示されました。睡眠と概日リズムや、併存疾患、治療薬の使用など、影響を及ぼす可能性のある要因を考慮して分析しても、これらの結果は変化しませんでした。
著者らはさらに、昼寝習慣の長期的な変化と認知機能の長期的な変化がそれぞれに及ぼし合う影響を検討するため、活動量計を用いた評価と認知機能の評価をいずれも2回以上受けていた1003人を対象とする分析を行いました。その結果、昼寝の時間と全般的な認知機能の間、および、昼寝の頻度と全般的な認知機能の間には、双方向性の関係があることが示されました。
今回の研究結果は、高齢者は年齢が上昇するにつれて昼寝時間が延び、頻度も増えること、そうした中でも、過剰な昼寝をする人は、認知機能の低下やアルツハイマー病の発症リスクが高いことを示しました。
[日経Gooday2022年6月30日付記事を再構成]
