Z世代とビジネスパーソン、2つのターゲットに刺さる店

韓国や台湾など、アジアンカルチャーを取り入れたグルメもZ世代のトレンドの1つ。都内に2店舗を構える「台北(タイペイ)餃子(ギョーザ) 次次(チィチィ)」も、台湾の現地の様子を再現し、SNSで拡散されているネオ居酒屋だ。内装は台北の夜市をモチーフにしており、現地の写真やレトロな雰囲気のアートを多数展示。壁ごとに装飾の内容を変え、どこで写真を撮っても絵になるようにこだわったという。
2号店となる有楽町店は、JR有楽町駅銀座口すぐの高架下にある。立地的にも近隣で働く人たちの利用がメインかと思いきや、店長の谷口和広さんによれば、「昼はビジネスパーソン、夜は若者と、時間帯によって大きく客層が分かれる」という。近隣にファッションビルや映画館があり、国際フォーラム、帝国劇場などイベントや観劇に使われる施設も多いため、平日でも若者が行列を作ることは珍しくないそうだ。

「もともとは、コロナ禍で海外旅行に行けない人に旅行気分を味わってもらおうというところからスタートしており、Z世代をターゲットにしていたわけではありませんでした。SNSでの情報発信をメインにしたことで、若い方への認知につながったと思います」と谷口さん。客層を考慮し、現在は「お酒と食事を楽しみたいビジネスパーソン」「写真を撮ってシェアしたい若者」の2つの軸でメニュー開発を行っているという。
看板メニューは「台北焼棒餃子」(5個319円)。豚肉と国産の黄ニラのみを使ったシンプルな具材が特徴で、1カ月で2400皿を売り上げる人気商品だ。酒に合う台湾総菜がメニューに並ぶ一方、ドリンクは動画を撮って楽しむ「おみくじカクテル」(605円)、存在感たっぷりの「金魚鉢フルーツポンチ」(726円)など、SNS映えするものも多い。メニューによってターゲット層を変える戦略が功を奏し、客単価の高い男性客の割合も増えているという。

飲食店にとって、今やSNSの活用は必要不可欠。何万人ものフォロワーを抱えるインフルエンサーの高い拡散力を支えているのは、流行に敏感なZ世代だ。彼らに支持されるネオ居酒屋の戦略の中には、酒離れが進む若者を振り向かせるビジネスヒントが隠されている。
(フードライター 古滝直実)