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日経 X woman

部下にどんな言葉をかければいいか悩んでしまう、上司の言っていることの真意が分からない。同じ日本語を話しているはずなのになぜ、伝わらないのか。そんな世代間ギャップに注目し、コミュニケーションのノウハウや言葉の使い方を分かりやすく解説したひきたよしあきさんの著書『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)。今回は同書から、上司と部下はなぜ言葉が通じないのか、背景を紹介します。

イソップの寓話(ぐうわ)に「北風と太陽」があります。旅人のコートを脱がすために、強くて冷たい風で吹き飛ばそうとする北風。しかし、旅人は風が吹くたびに「飛ばされまい」として、コートを手で押さえてしまいます。一方の太陽は、暖かく穏やかな陽の光で旅人を照らします。「気持ちがいい、少し暑くなってきた」と感じた旅人は、自らコートを脱ぎます。

太陽は「光明(こうみょう)の神」アポロン、北風は「貪(むさぼ)り尽くす者」とも訳される「北風の神」ボレアス。タイプの異なる2神の在りようから、さまざまな教訓が生まれました。

教訓1
 冷たい態度、強引な姿勢で物事を動かそうとしても、相手は心を閉ざして頑(かたく)なに拒否するばかり。一方、明るく、穏やかな光で照らし続ければ、相手は心を開き、自ら行動を起こそうとする。

教訓2
 事を急いで、手っ取り早くやろうとしてもうまくいかない。時間はかかるが、着実に。誰もが前向きな気持ちになれば大きな成果を生む。

古い寓話ではありますが、今を生きる私たちにも深く腹落ちします。自分の生活に照らし合わせ、「いるいる! 北風みたいな人」「ああ、太陽のような人に救われた経験がある」と、実感できる人が多いのではないでしょうか。

今、世の中はますます「北風と太陽化」しています。

デジタル社会が進化して、リモートワークが当たり前になりつつある。リアルに会って、雑談したり、にじみ出る人柄を感じたりする機会が減っている。求められるのは「効率」と「実績」。ついつい「効率的にやっているのか?」「実績は上がっているのか?」という言葉が増えてしまう。仕事ばかりではありません。家庭やプライベートのコミュニケーションでも、LINEやインタグラムなどのSNSは不可欠。短い言葉を書き連ねるなかで、つい、きつい言葉や言わなければいい一言を書いてしまう。私たちは知らず知らずに、「北風化」する言葉の世界を生きています。

だからこそ、ぽかぽかと温かい「太陽のような一言」にじーんとくる。苦しいときに先輩や友人が掛けてくれた一言。上司のはっと目の覚めるような言葉、悩みを小さくしてくれる言葉、今の生き方を肯定してくれる言葉がうれしい。ネット上にも、心が救われた言葉や名句が数多くあげられています。

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