逆風下で売上高「過去最高」を更新

少子高齢化やデジタル化が進む中で、文具業界全体の市場規模は縮小傾向にある。矢野経済研究所の調査によると、2019年度の国内文具・事務用品の市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年度比3.0%減の4441億円。20年度はさらに減少すると予測されている。分野別にみても、筆記具、紙製品、事務用品の全3分野で市場が縮小。厳しい事業環境がうかがえる。

そんな中、サクラクレパスの20年度の売上高は386億円で、8年連続で過去最高を記録した。成長を続ける背景には、どんな戦略があるのか。数字を直接的に押し上げているのは海外事業だ。12年度に27%だった売上高に占める海外比率は、20年度には41%にまで高まった。主に欧米や中国での販売が好調だという。主要な各エリアに販売会社を置き、現地市場の需要を綿密に調査した上で、「響く」パッケージデザインや商品名などを提案している。

「欧米でも弊社の筆記具が人気です。例えば、水性ゲルインキを使ったボールペン『ボールサイン』。創業当初から長年かけて培った、色をつくる技術を駆使し、幅広いカラーバリエーションを展開しています。文具において、『メイド・イン・ジャパン』への信頼感はいまだに高い印象です」(大塚氏)

今でこそ店頭で見るボールペンの主流は水性ゲルインキを使った商品となったが、このインキを世界で初めて開発したのも、実はサクラクレパスだという。水性ペンであれば染料を使うのが当たり前だった時代に、顔料を使う技術を着想した。それによって、耐水性や耐光性を加えることに成功したのだ。

クーピーペンシルは世界初の「全芯タイプの色鉛筆」

大塚氏は「顔料は元来、クレパスのような画材で使われてきたものでした。それを筆記具に使う技術を思い付き、実用化にまでこぎつけられたのは、画材メーカーとして産声を上げ、知見を蓄えてきた当社だからこそだと思います」と説明する。

「これまでになかった画材」のクレパス、「これまでになかった色鉛筆」のクーピーペンシル、「これまでになかった水性ゲルインキ」のボールペン……。同社は100年の歴史の中で、繰り返し「世界初」を生み出してきた。その背景に見えてくるのは、今ある市場で「一番手になれるかどうか」を競うよりも、常に革新的なものを生み出そうとする開拓者精神だ。原点となったクレパスの大ヒットに安住せず、常に新しい境地を切り開こうと意気込む姿勢が「長寿」を支えている。

(ライター 加藤藍子)