スシロー:冷めてもうまい、おすし×すき焼き「すき焼き海鮮しゃり弁」

新ジャンルの個性派弁当としては、スシローのテークアウト限定商品「すき焼き海鮮しゃり弁」も話題だ。21年11月にコロナ下で非日常を体験するニーズで生まれた。「おすし×すき焼き」の新しい取り合わせで、「冷めてもうまい」新ジャンル、しかも一つ星シェフと共同制作した味、とワクワク要素が詰まっている。
この弁当は、スシローを運営するあきんどスシローが、東京・渋谷の一つ星レストラン「sio」のオーナーシェフ、鳥羽周作さんと共同制作したもの。イートインのシャリは人肌だが、テークアウトでは冷めてしまう。そこで鳥羽さんから「冷めてもおいしいものを作ろう」という提案があったそうだ。21年11月から全国のスシローおよびテークアウト専門店「スシロー To Go」で販売されている。
スシローの事業会社、FOOD & LIFE COMPANIES商品開発部長の吉田啓之さんは「昨今、飲食シーンにおいても新しい生活様式が定着していることを踏まえ、テークアウト事業にも力を入れており、スタッフを介さずお持ち帰りができる『自動土産ロッカー』の設置やテークアウト専門店『スシロー To Go』の出店強化を進めています。その中で、お持ち帰り商品をより楽しんでもらうために、“冷めてもうまい”新ジャンルのテークアウト限定品を開発しました」と話す。

フタを開けると、カラフルな具でシャリが見えないほど豪華に盛り付けられている。すしの具材は、大エビ、ホタテ貝柱、卵、サーモン、イクラ、カズノコなど。さらにすき焼き肉も盛り込まれている。
食べてみると、シャリはほどよい酸味と甘さ。シャリは二層になっていて、間に入っているシイタケとレンコンの中具がうま味をプラス。すき焼き肉は、割り下ベースの甘じょっぱい味付けだが、味が濃すぎず、シャリによくなじんでいる。卵の甘味やイクラの塩味など具の味わいは多彩。ダイコンとニンジンのなますやカズノコなど食感がよい具材も多く、五感が楽しい。
さまざまな具を一緒に食べることで、むしろ味が複雑になり、深みが増す。食べる前は弁当で1000円超えは高いと思ったが、食べ終わるとむしろ安いと感じた。
販売は好調で、特に駅構内に出店している「スシロー To Go」でよく売れており、仕事帰りや買い物帰りに買い求める人も多いそうだ。
コロナ下の多様なニーズをとらえて生まれた新ジャンルの個性派弁当。これからは「外食がしづらいから自宅で楽しむ」という消極的な理由ではなく、「この弁当が食べたいから今日は自宅で」「自分らしい組み合わせで自由に」という人も増えていきそうな気がする。今後、どんな店からどんな弁当が登場するのか楽しみにしたい。
(フードライター 古滝直実)