そして最後がスキルだ。ダイバーシティー(多様性)の一環として属人的な能力も尊重しつつ、人材育成のノウハウを全社員がスキルとして身につけるトレーニング制度が整っている。他企業も研修制度は拡充しているが、「うちは現場の人間が主体になってトレーニングするのが特徴。例えばLGBTQ+(性的少数者)などダイバーシティーに関する研修の場合、多くの企業は専門家を呼んで社員が聞き、理解するスタイルが主流だろう。当社では社員がトレーナーとなり、社内の状況に即した内容にカスタマイズし、各チームが生かせるようにしている」という。

人事統括本部シニアディレクターの市川さんは「P&Gは新人から顧客を担当し、相当の裁量権が与えられる」と話す

P&Gは優れた人材を輩出している。特にマーケッターの活躍は目覚ましい。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復させたことで知られる森岡毅氏。現在はマーケティング支援の刀を経営する。日本コカ・コーラでマーケティング部門を指揮する和佐高志氏、キリンビールでヒットを連発する常務執行役員の山形光晴氏らはいずれもP&G出身者だ。女性にも米国本社でバイスプレジデントとして活躍した和田浩子氏がいる。

仕事を学ぶ「70:20:10」の法則

同社には仕事を学ぶ上で「70:20:10」の法則があるという。70は実際の現場で覚え、20は上司や先輩から学び、10は研修などの机上で磨く。職場内訓練(OJT)重視の多くの日本企業と大差があるわけではない。「外資系企業といっても、幹部クラスを社内で育成していく内部昇進制を基本としており、日本企業と大差があるわけではない。新人をしっかり育て、活躍する環境を整える。いきなり幹部クラスが他社からスカウトされてきたりするといったことはほぼない」と話す。

現在のP&Gの大卒社員の男女比はほぼ半々だという。市川さんは「部署にもよるが、私が入社した頃の女性の管理職社員はまだ少なかった。『フィードバック イズ ギフト』を大事にして社員の声を反映し、働く環境がだんだんと良くなっていった」という。男女格差のない人材成長を重視し、一つ一つ改善して制度を整え、活用する文化をつくり、明確にスキル化したP&G。この結果が現在の評価に表れているのかもしれない。

(代慶達也)

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