「フィードバック イズ ギフト」

ただ、その分、仕事は厳しい。オーバーワークに陥る若手社員もいる。しかし、「仕事を効率化したり、働き方を改善したりするツールがそろっている。先輩などの成功事例を皆で情報共有する仕組みがある」。一般の企業では昔気質のやり手の営業職は自分のノウハウを秘密にしがちだ。しかし、同社では成功例を共有し、皆で話し合ったり、自分の意見を加え、その事例を改善してフィードバックしたりすることは当たり前だ。「フィードバック イズ ギフト」と社内で呼んでいる。

P&Gが優れているのは多様な人材の成長環境を整えるため、3つのポイント(要素)に整理し、意識的に人材育成のシナリオを描いていることだろう。

まずは制度だ。内勤業務に携わる社員は勤務時間が柔軟なフレックスワークを10年以上前から導入。外勤営業の場合はそもそもオフィスを経由せず、直行直帰が可能になっている。新型コロナウイルス下で在宅勤務制を導入する企業が急増したが、同社では10年以上も前から「ワークフロムホーム」と呼ぶ在宅勤務制を実施。さらに2021年7月から「ワークフロムエニウェア」という自宅以外の場所での業務も可能とした。本社や支社より遠く離れた場所や地方の実家からでも勤務できるわけだ。

福利厚生面も充実している。ベビーシッターや介護の支援、スポーツジムの健康支援など社員によって求めるサポートは異なるため、「マイウェイ・マイペイ」という個別のニーズに対応した制度も導入した。

次は企業文化だ。P&Gと同様の働きやすい制度を導入済みの企業は少なくない。しかし、制度を活用しやすいかどうかは別問題。上司から「また、君は在宅勤務?」と嫌みを言われる部下もいるのではないか。市川さんは「うちは社長をはじめ、各チームのリーダーがまず自ら各種制度を活用してロールモデルとなるという文化がある。上司がどんどん活用するので部下も使いやすい」という。

オフィス勤務の社員は、フレックスワークをほぼ全員が活用。コロナ禍前でもワークフロムホームでは月間5日は特別な理由がなくても、直属の上司との合意の上で在宅勤務できる仕組みだったが、これもほぼ男女関係なく、全社員が使っていたという。そもそも「フィードバック イズ ギフト文化なので社内の風通しはかなりいい。部下から上司へのストレートトークを大事にしている」と語る。

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