コマーシャルの1つでは、スチュワーデスの制服を着た俳優が、カメラを直視して以下のようなメッセージを伝えた。「私は高度な訓練を受けたプロフェッショナルで、大きな責任を負っています。緊急事態が発生した場合、すべての乗客からの敬意と信頼、そして協力が直ちに必要です。正直に言いましょう。『セクシーなスチュワーデス』というイメージは、どんな高度においても安全ではありません!」

ロサンゼルスのチケットカウンターでストライキをするウェスタン航空の客室乗務員。体重制限をたった2キログラム超過しただけでスチュワーデスが解雇されたことに抗議している (PHOTOGRAPH COURTESY LOS ANGELES TIMES PHOTOGRAPHIC COLLECTION/UNIVERSITY OF CALIFORNIA, LOS ANGELES)

グループは安全のプロとして扱われる法的権利を求めて運動し、客室乗務員を免許制にするよう何年もかけて米国政府に働きかけた。1972年から1976年にかけて、「女性の権利のために闘うスチュワーデス」は、スチュワーデスを頭の悪いピンナップガールとして描くコマーシャルを流している企業へのボイコットを組織した。一方で、スチュワーデスが堅実にスノータイヤを選ぶ姿を広告にしていたファイアストン社は、賛同の手紙を受け取った。

彼女たちは、マスコミに自分たちの努力を知らしめた。「女性の権利のために闘うスチュワーデス」は、見出しとして魅力的だった。

闘いはまだ続いている

ホットパンツと 「フライ・ミー」の時代は過ぎたが、性的なイメージはまだ残っている。中には昔ながらの単純な性差別もある。男性「スチュワード」が米国の国内線で仕事をし始めたのは1970年代初めになってからで、現在でも客室乗務員のうち男性は20パーセントにすぎない。

しかし、客室乗務員に対し敬意を求める数十年の闘いは、結果を残している。1989年、連邦法により初めて職場における喫煙が規制された。2003年には、9.11のテロ事件によって航空保安の見直しが行われた後、ついに連邦議会を説得し、安全のプロとしての免許が制定された。

現代の客室乗務員は、政府からの免許を得た安全のプロフェッショナルだ。2017年、米ダラス・ラブフィールドで飛行機の搭乗準備をしている、サウスウエスト航空の客室乗務員エイミ・マーティンさん (PHOTOGRAPH BY ALLISON V. SMITH, THE NEW YORK TIMES/REDUX)

そして今日も、客室乗務員たちは乱暴な乗客への対抗を続けている。パンデミックの際、航空会社からほとんど何の支援も得られなかった客室乗務員たちは、組合に支援を要請。米国最大の客室乗務員組合である客室乗務員協会は、すべての航空会社が共有できる禁止乗客のリストを作成するよう、米国議会に要請した。

このように乗務員たちは、世間が自分たちをどのように扱うかについて積極的にメディアに語り、護身術の講習に励んでいる。1970年代の客室乗務員は体を触ろうとする乗客をかわす方法を学んだが、2020年代の客室乗務員が米国航空保安局で教わるのは、パンチ、引っかき、目つぶしなどの防御技だ。

以前と同様、酒類は問題になっている。「飛行機内での暴力事件は手に負えませんし、アルコールが一因であることもよくあります」。客室乗務員協会のサラ・ネルソン会長はワシントン・ポスト紙にそう語った。ネルソン会長は国内線でのアルコール販売禁止の陳情に成功し、過去2年間の大半はそれが守られてきた。しかし、ファーストクラスではすぐに酒類の提供が復活し、エコノミークラスでも最近復活し始めている。

今日の客室乗務員に対する暴行は気になるところだが、いまだに彼らを、乗客の気まぐれを満足させるための使い捨ての人形だと捉える人はほとんどいないだろう。客室乗務員は先人たちの足跡をたどり、組合や報道、立法、ストライキなどの方法で闘っている。

それでもダメなら、ダクトテープの出番だ。

(文 NELL MCSHANE WULFHART、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年4月4日付]