私の場合、「か行」「さ行」「た行」が苦手でした。このため、言葉を口から発する直前に、ものすごい速度で頭の中で、吃音にならない語彙を探していました。いわば人工知能(AI)開発の「ディープラーニング(深層学習)」のようなものです。AIにディープラーニングをさせて、最適なコンテンツをリコメンド(推奨)させる現代の最先端技術に類似した、「最適な語彙を瞬時に探す」という作業を、自らの脳内で24時間していたのです。

山形弁という方言にも助けられました。例えば「そうだよ」といえなくても、「んだよ」と話せばよかったように、標準語に語彙がなくても、山形弁には多様な語彙があることが多かったのです。

自己表現ができるツールが欲しい

私がITが好きになったきっかけは、こうした「自己表現ができない」自分に対してなんとか「自己表現ができるツールが欲しい」と考え続けてきた延長線上に、たまたまIT(情報技術)があった、ということだったと思います。

父は開業医でしたが、強く医師を志す契機となったのは、中学生の時に東京を訪れたことです。大都会は驚くことばかりでしたが、たまたま、叔母が慶応義塾大学の医学部を卒業した若手医師を紹介してくれました。1時間ほどの会話でしたが、生まれて初めて聞いた「都会の医師」の話に、大きな衝撃を受けました。これが後に、慶大医学部に進学したい、という強い思いにつながりました。

「都会の医師」の話に慶大医学部進学の思いを強めた=PIXTA

新型コロナウイルスの感染拡大で、リモートによる人と人のコミュニケーションが普及しました。もし、当時の私と同じような地方の中学生がいるのなら、こうした技術を活用して、私と同じような経験ができる場所やチャンスを与えてあげたいと思います。そのためのフォーマットを、ぜひ提供したいと考え、現在準備を進めています。世間知らずの地方の中学生が、都会で最先端の医療を手がける若手医師と対話できれば、その中学生にとって人生の選択肢を広げてあげることができるはずです。こうした夢をかなえてくれるのがITだと思うと、ますますIT好きにならざるをえません。

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