禍福は糾える縄の如し IT好き、な医者が生まれるまでHDCアトラスクリニック院長 鈴木吉彦

写真はイメージ=PIXTA
DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代、医療はどう変わっていくのか。生活習慣病の代表格ともされる糖尿病の専門医で、1990年代後半~2000年にかけて医療情報ポータルサイト(MediPro/MyMedipro)を立ち上げるなど、デジタル領域についても豊富な知見を持つ鈴木吉彦医師(HDCアトラスクリニック院長)に医療とデジタルの新時代について語ってもらいます。

私の生まれは山形県。周囲には田んぼとサクランボ畑しかない田舎で生まれました。4歳の頃に道路を渡る時に転んで、トラックにひかれてタイヤの下敷きになりました。おなかにはタイヤにひきずられた跡が残っていたそうです。

その時のショックのためか「吃音(きつおん)」障害を発症しました。小学校入学時には名前を発音できませんでした。吃音障害があると、いじめられると思われるかもしれませんが、東北の田舎には、ドラマ「おしん」のように支援してくれる人がたくさんいて、いじめられることはありませんでした。けんかをすれば負けるからけんかは嫌いでした。口げんかができないから当然のことです。なので、楽しみは野球と音楽(歌うと吃音は止まります)、美術でした。

友達がいないことが、ごくごく普通のこと

あまりにも幼少期から友達がいないと、友達がいないから寂しいとすら思いません。一緒にスポーツできている人が友達、そんな関係ばかりでした。友達がいないことが、ごくごく普通のことでしたので、だからといって落ち込むことはありませんでした。体内でインスリンをつくれない「1型糖尿病」の患者さんは発病が幼少期であればあるほど、インスリンの自己注射をハンディキャップと受け止めないことが多いようですが、それと似ています。

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