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人生100年時代と言われる今、あなたの「現役時代」はあと何年あるだろうか? ここでいう「現役時代」とは、単に年齢を指しているのではない。「学び、成長して第一線で活躍し続けられる期間」「時代に取り残されずに自己実現し続けられる期間」のことだ。加齢とともに古くなっていく常識や固くなっていく頭を放置していれば、すぐに「現役引退」せざるを得なくなるという。

東京大学経済学部教授で、中学卒業後は独学で勉強した柳川範之氏と、陸上選手の現役時代はコーチをつけず、さらに選手からビジネスパーソンへのキャリアチェンジを経てきた為末大氏の共著『Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」』(日経BP)には、今のビジネスパーソンにこそ必要な新しい「学び」のヒントがある。2人の対談パートの一部を見ていこう。

◇   ◇   ◇

今こそ「アンラーン」が必要な理由

柳川:新型コロナウイルス、AI(人工知能)などを含む技術の急速な進歩、SDGsに代表されるような価値観の更新などに対する日本社会の混乱や困惑ぶりを見ていると、「アンラーンが必要だなぁ」と、切実に感じます。企業も個人もアンラーンできていないケースが非常に多い。

それで気づいたんです。もしかして、「アンラーン」するという発想のない人が多いのではないか、と。

為末:「アンラーン」は、とても面白い概念であり手法ですが、言葉として、どういう意味かが分かりにくいですね。

柳川:「アンラーン」はアメリカのビジネス界では以前から注目されている概念で、「学び」を「un」する。つまり、いったん捨て去る、取り外す、忘れる……というようなイメージの言葉です。そうすることで、未来の可能性がより広がっていくという、とても大事な考え方ですね。

「アンラーン」の概念は、ビジネスパーソンよりも、スポーツ界の人たちのほうが、実感として「よく分かる」というふうに僕は思っているんだけど、どうでしょう?

為末:はい。スポーツ界の人のほうが、実感があると思います。アスリートの場合、2つの意味で「アンラーン」が切実に必要ですから。

為末氏はアスリートにとってのアンラーンの必要性を指摘する(写真:尾関祐治)

為末氏はアスリートにとってのアンラーンの必要性を指摘する(写真:尾関祐治)

柳川:2つの意味というのは?

為末:1つは、日々のトレーニングの中で、自分自身の競技能力を高めていくプロセスにおけるアンラーンです。

たとえば自転車ですね。自転車に乗れるようになったとき、人は、ペダルを無意識にこげるようになっています。スポーツのように身体で覚える動作は、一度ラーニングが完了すると、その後は無意識にかなり近い領域で、自動的に身体を動かせるようになります。

けれども、もし競技として自転車と向き合い、トップの自転車選手になりたいのなら、一度は無意識でできるようになったペダリングを、いったん意識の対象にして、その動きを変えていく必要があります。「勝手に足が動く」というような無意識の動きを1回忘れて、意識的にラーニングし直すんです。

2つ目は、日々のトレーニングの話ではなくて、もっと引いた視点――アスリートのキャリアにおけるアンラーンです。アスリートというのは、年齢的には比較的早い段階で選手としての現役時代が終わります。だから遅かれ早かれ、誰もがキャリアチェンジを経験します。そのときに競技者時代の「思考のクセ」をアンラーンできないと、うまく次のステージに行けない、ということがあると思います。

「セカンドキャリア」を考えざるを得ないときに、それまでに得たものをすべてそのまま抱え込んでいたら、未来の選択肢が非常に狭くなってしまうんです。

それどころか、悪い作用を及ぼすこともある。たとえばアスリート時代の「勝負への強いこだわり」は、通常のビジネス現場では嫌がられることが多いのではないでしょうか。

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