布石はあった。同社では17年度に人事制度を刷新。『育成と成長』を柱に据え、社員は働く時間の1割を研修や仕事の勉強に使うこと、そして会社も社員の自己研さんと成長を支援するために教育への投資額を「上場企業平均の3倍以上」に維持することなどを盛り込んだアクションプログラムを作っていた。そうした中で、コロナ禍の前から「リーディングアサインメント(課題図書)」という取り組みをしていたのだ。

「日々の業務をこなしているだけでは成長は限定されるため、リーディングアサインメントでは、部署ごとに上司が部下に書籍を推薦し自己学習を促していました。ただ、当時は選書や運用を部署ごとに行っていて、感想文の提出までは求めていませんでした。全社的な展開を検討していたところ、コロナ禍をきっかけにTeamsのチャット機能を使って、感想をシェアしながら本を通じた知的交流をするアイデアが生まれました。コロナ禍でなかなか対面で会えない中、会社への帰属意識や一体感が芽生える効果も期待しました」

推薦図書は70冊以上にのぼる

リーディングアサインメントでは、部署ごとの選書ということもあり専門的な内容が多かったが、今回の取り組みは全ての新入社員が対象なので、推薦本のジャンルは多岐にわたる。中でも多いのはリベラルアーツ(教養)系だという。

「リストを見るだけでも、これから仕事をしていく上で世の中のいろいろなことに興味関心を持つ必要があるのだということがわかるでしょう。また、ビジネスパーソンとしてどういう教養を身につければよいのか、見渡せる効果もあると思います。リストに刺激を受けて、全部読破したいと意気込む新入社員もいます」

役員らが感想にコメント

感想を投稿し、役員らとやりとりすることについて、新入社員はどう受け止めているのだろうか。宮﨑さんによると「同期や経営幹部がどんなテーマに関心を持ち、どういう考え方をしているのかを知る機会になって良い」という好意的な反応が多いという。同期であってもコロナ禍では会う機会も少なく、ましてや各事業所に配属された後では交流も難しい。そんな中、Teams上のやりとりがお互いを知る貴重な場にもなっているのだ。

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若手社員から学ぶリバースメンタリング制度も導入
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