経団連会長も新人とチャット 住友化学の「読書対話」 

住友化学・人事部の宮﨑美香さん
人気企業・注目企業が新人教育で使ったり、新入社員に推薦したりしている書籍と、各社の人材育成戦略を取り上げるシリーズ「社会人1年目の課題図書」。第10回は住友化学です。

住友化学は、包装材などの石油化学製品から情報電子部材、農薬医薬品製造まで幅広い事業を手がける総合化学メーカー。100年以上の歴史があり、現在の十倉雅和会長は、経団連会長の顔も持つ。化学を通じて社会に貢献したいと考える就活生に人気の企業だ。

人事部の宮﨑美香さんによると、同社の新入社員研修では2020年度から推薦本リストを配布している。その数は初年度が約50冊、2年目となる今年度はなんと73冊。十倉会長、岩田圭一社長をはじめとする役員20人が一人数冊ずつお薦めの本を選び、リストにはそれぞれが推薦文を寄せているという。

ユニークなのは、本を通じて新人と経営陣の対話が生まれる点。新入社員が本を読んだ感想をビジネスチャットアプリのTeams(チームズ)に投稿すると、役員から返答を得られるのだ。2カ月の期間中、新入社員約120人のうち100人超が実際に投稿。役員の返答を受け、さらに新人が投稿するケースもあり、活発なやりとりが行われた。人事部ではそうしたやりとりを冊子にまとめ、秋に行われるフォローアップ研修で配布するという。

十倉会長が推薦する生命の本

今回は数ある推薦本の中で、特に新入社員からの感想が多く集まった7冊を紹介してもらった。それが、『WHAT IS LIFE? (ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』(ダイヤモンド社)『脱プラスチックへの挑戦 持続可能な地球と世界ビジネスの潮流』(山と渓谷社)『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP)『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)『世界のニュースを日本人は何も知らない』(ワニブックス)『スパイス、爆薬、医薬品 世界史を変えた17の化学物質』(中央公論新社)『人を動かす』(創元社)だ。

『WHAT IS LIFE? (ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』は、今年経団連会長に就いた十倉会長のお薦め本で、推薦文にはこうある。

「ノーベル生理学・医学賞を受賞した著者による初めての一般向け書物。素晴らしく面白いの一言に尽きる。細胞、遺伝子、自然淘汰、化学としての生命、情報としての生命とステップを踏み、生命とは何かを問う。読者に生命の神秘に対する畏怖の念を抱かすと同時に地球生態系保全の重要性を認識させる。また行間に見え隠れする著者の人間性が魅力的だ」

『WHAT IS LIFE? (ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』
著:ポール・ナース
出版:ダイヤモンド社
ポール・ナース氏は、1949年英国生まれの遺伝学者、細胞生物学者。細胞周期研究の業績が評価され、2001年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。生きているとはどういうことか、生命とは何かについて、自らの生い立ちや生命に興味を持ったきっかけなどのエピソードも交えながら、平易な言葉で語っている。2020年3月の発売後1週間で5万部を突破した。

コロナ禍をきっかけにTeamsで「読書感想文」を投稿

経営幹部が推薦した本を新人が読むだけでなく、双方向のコミュニケーションとして読後感を共有する試みが始まったのは、20年4月。新入社員が入社早々コロナ禍で在宅勤務を強いられたのがきっかけだった。彼らの不安や戸惑いを少しでも緩和し、仕事に対する意欲を高めてもらおうと導入を決めた。

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